第11話 赤毛の男視点

 ゆっくりと魔獣へ近づいていく黒髪の男に赤毛の男が抗議する。


「ねえ、こいつマジなんなの、ほんっとに馬鹿力!」

「ハハハ、もうちょい頑張れ」

「マジ、勘弁してよ~」


 魔獣は締め付けている蔓から逃れようとずっともがき続けていて、それを抑える赤毛の男の額にはうっすらと汗がにじんでいた。


 黒髪の男が近づいていくと魔獣は威嚇するように唸り声をあげる。

 黒髪の男は眉をしかめて魔獣の目の前に立つと、手にしていた長剣で一閃のもとに魔獣の首を切り落とした。


 赤毛の男がホッと息をつくと蔓が地面へと戻っていき、魔獣の身体が地面へと倒れこむ。

 ぶつぶつと呟きながら赤毛の男が魔獣に近づいていく。


「うっわ~、トカゲが紙みて~、こいつマジ硬いのに!」


 このブラックスロートと呼ばれるトカゲの魔獣は、身体を硬い鱗で覆われていて硬くて、なまじっかな刃物じゃ歯が立たない。それなら魔法が効くかというと炎や氷にも耐性があるときている。出会ったらマジ御愁傷様な魔物で、それを紙のように斬るなんて相棒の魔剣が規格外なだけだ。


 赤毛の男がトカゲの体をマジックバックへと収納すると黒髪の男が頭を拾って渡してきた。それも一緒に収納する。


「討伐完了っと‥‥‥‥で、あの子ら、どうするよ?」

「保護して、ギルドへ報告だろ」

「やっぱ、そうだよな~」


 正直めんどくさいし、あの金髪キラキラの坊っちゃんなんか、どう見ても貴族だしさ~‥‥‥‥関わりたくないなあ


 赤毛の男は周囲に視線を巡らすと、ため息をついてポリポリと頭をかいた。



 黒髪の男と一緒に子供達のもとに歩いていくと、魔獣から間一髪で助けた女の子の怪我が目に入ってくる。


 どんな転びかたをすればこんなに広範囲に擦りむけるんだ? 


 思わず顔をしかめて傷薬を手渡していた。


 俺はロリコンではないが、女の子に傷が残るのは見逃せない。今は傷があるからあれだけど、この子、ぜって~美人さんになると思うんだ。将来の損失だからな。うん、うん、とひとりで納得していると、


「え、これは‥‥‥‥もしかして、傷薬?」


 女の子が呆気に取られたように聞いてきた。


 ねえ、何だと思ったの? 俺の方が呆けちゃうよ。


「もしかしなくても傷薬だよ」と言いながら笑ってしまった。

 どうやら女の子は貰えるとは思っていなかったようだ。


 まあ、そうだろうね‥‥‥‥俺もさっきまで、あげるつもりはなかったからね。


 女の子はしばらく傷薬をみていたが、顔を上げると「ありがとう」と満面の笑顔になった。


 俺はその笑顔に――ヤバい、心臓ドキドキしてる――やられてしまった。


 でも、俺は断じてロリコンではない‥‥‥‥はずだ。


 






 

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