第3話 入学取消ですか

 ミアは金髪、碧眼の男の子の整った顔立ちと着ている衣服を見て貴族の子息だろうと判断した。

 一人で悩んでたって良い考えは浮かばない。貴族なら何か知ってるかも、と男の子に相談してみた。


「ふ~ん、魔導学園へ行きたくないねぇ」

「そうなの、だからね、どうにか辞退できないのかな」

「辞退というか、入学許可の取り消しなら年に数件あるよ」


 え、あるの?


「ええと、それはどうして?」

「素行が悪すぎて、というのがひとつ」


 素行‥‥‥‥不良?


「もうひとつは犯罪を犯す」

「‥‥‥‥犯罪」


 犯罪は無理かな。お父様に殺されるわ。


「最後に魔法が使えないこと」

「え」

「ごくたまにいるんだよね、魔力はあるけど魔法が使えない人。さすがに魔法が使えないと授業についてこれないからね」

「ハハハ‥‥‥‥そうだよね、うん」と頷く。


 なんだ~‥‥‥‥まったく、ぜんぜん心配することなかったわ。ミアはずっと重くのしかかっていたものが取れたように気持ちが軽くなった。

 満面の笑顔でお礼を言う。


「ありがとう」

「いや、役に立ったなら良かったよ」


 そう言って二人は立ち話をしていた路地からでようとした。その時、路地の奥から二人組の男が近づいてきて、そこでミアの意識はなくなった。





 ミアはまどろみから覚めるように意識がはっきりしてくる。寝心地の悪さに何かおかしいなと思い、思いまぶたを開けると知らない場所にいた。


 え‥‥‥‥っと


 許容範囲を越える出来事に思考がついていかない。

 取り敢えず視線を動かし状況を確認する。どこかの家みたいだが家具もなにもない殺風景な部屋の床に横たわっているようだ。見える範囲には誰もいないのを確認して、恐る恐る上半身を起こす。


「気がついたようだね」


 声をかけられビクッとなるが、それが先ほどまで一緒にいた男の子だと分かり緊張がとける。

 男の子が気遣うように聞いてくる。


「大丈夫? 怪我はなさそうだけど‥‥‥‥」

「うん、大丈夫‥‥‥‥ここは、どこ?」


 ミアはキョロキョロと周りを見ながら尋ねた。それに男の子は頭をふって答える。


「わからない、どこかの家みたいだけど‥‥‥‥気がついたら、ここにいたから‥‥‥‥扉には鍵が掛かってるし‥‥‥‥」


 男の子に言われて、気を失う前のことを思い出す。


誘拐‥‥‥‥された?


 そう思うと、急に怖くなってきた。

これからどうなってしまうのか? 自分たちを拐った男達は何が目的なのか、と考えていると男の子に話しかけられた。


「男達の目的はなんだろう?‥‥‥‥やっぱり人身売買かな」


 男の子の話の後半部分の呟きに『子供を拐って奴隷商人に売る』という話を思いだし、売られる自分たちを想像して恐怖に顔がひきつる。

 隣を見ると男の子も自分の言葉に顔色を悪くしていた。







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