第1話

いつも通り目が覚めた。

今はもうすっかり慣れてしまった、自分では無い誰かの家の天井。

窓から差し込む光や風によって運ばれる匂いが春の訪れを感じさせる。

(ああ、もう3ヶ月も経ったのか…)

異世界転移して、3ヶ月。

俺は、魔王城の寝室にいた。

寝室とは言っても魔王が使うような寝室では無く、来客用の寝室だ。

何でこんな所で寝てるかって?

捕まっちまったんだよ、魔王に。



そう、ほんとに捕まったのだ。魔王直々に捕まえられた。歴史上(元の世界でもこちらの世界でも)初めてだろ。魔王に「私が勝ったら、言うことを聞いて」と言われて自分から捕まりに行ったバカは。俺くらいのもんだ。


そんなこんなで、捕まっちまったのだ。

なので、開き直って楽しむ。


取り敢えず朝ごはん。

寝室を出るとダイニングみたいな所がある。

人型の魔物が準備をしていた。

今日は、サンドウィッチか…。美味そうだな。


少し遅めの朝ごはんを食べ始めると

入ってきた。

何が?

美少女が。

その美少女は、自分のサイズより少しデカ目のエプロンを着けていた。後ろで括っている金色の髪と水色の瞳が朝日に反射してより綺麗に見える。

普段は料理をする事が少ない彼女なので、エプロン姿は貴重なのである。少し見とれていたら、

「美味しい?」

と誇らしげに聞いてきた。自信作なのであろうか?

普通に美味しかったので、

「美味しいよ。」

と言うと、

その真っ白な頬を少し赤らめて

「ありがとう。」

とボソッと言うのが可愛らしい。

「何ニヤニヤしてんのよ。」

可愛くてつい…。と思ったが声には出さない。あえて…

「いやなんでもない。」

「そう。」

それだけ言うと彼女は部屋を出て行った。


相変わらず、可愛い魔王だ。

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