40

その日は定時まで和気あいあいと仕事を進めることができ、いつもより会話も多めだった。


杏奈は帰り支度をしながら、久しぶりに得られた仕事の充実感を噛みしめていた。


ずっと、前の仕事と比較して上手くいかない自分に自己嫌悪だった。

どうにかこの状況を打開できないかともがいていた。


それが、minamiのパンをきっかけに急に出口が見えた。

あんなに悩んでいたのが嘘みたいに、目の前の霧が晴れていく。


それもこれも、考えればやはり広人のおかげなのだと、杏奈は実感していた。


(また助けられちゃった。すごいな、広人さんは。)


そんなことを思うと、何故だかすごく広人に会いたくなった。

今日の出来事を報告して、広人のおかげだとお礼を言いたいと思ったのだ。


だが、杏奈と広人は連絡先を交換していない。

酔っ払って介抱してもらったとき広人の家へお邪魔したが、その家の場所は覚えているようなそうでもないようなとても曖昧だ。


今さらもう一度連絡を取りたいと言うべきだろうか、杏奈は頭を悩ませた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る