四章◆変化

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静かな住宅地を歩き路地を曲がると、そこには控えめな立て看板があり、看板には店主を想像させる可愛らしい字体で【小さなパン屋さんminami】と書かれている。


杏奈はその前で立ち止まると、店舗の方をチラリと見やった。


(…来てしまった。)


ずっと足が遠退いていたパン屋minami。

転職して遠くなったからではない。

自分が追い詰めたであろうminamiの店員である琴葉に会うのは、とんでもなく気まずいのだ。

なのに。


(広人さんのせいだ。)


自分の行動を広人のせいにする。

広人が“謝ってみたら?”なんて言うので、何故かそれに感化されてしまって、今ここに杏奈は立っている。


自分の意思だとは思いたくない。

思いたくないのに、杏奈の心の中は“謝らなくちゃ”という思いでいっぱいになっていた。


よく考えてみればあの事はもう終わったことだから、今さら蒸し返すことではないのだ。

なのに杏奈はminamiに来てしまった。


ガラス張りで大きく開けた明るい入口は、何者も拒もうとはしない。

約一年ぶりに訪れるminamiだったが、杏奈が見る限り前と何も変わっていなかった。

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