第5話


〜前回のあらすじ〜

大好きな婚約者ブライアン様が告白されてる現場に偶然居合わせちゃったグレイシー。ブライアン様は断るけど食い下がらない告白相手、そんな彼女にブライアン様はなんとグレイシーを呼び出す!修羅場へと呼び出されたグレイシーが取る行動とは?!ブライアン様がグレイシーを呼び出した理由とは?!果たしてうまく告白相手を納得させることがグレイシーにできるのか?!そうご期待あれ〜



あらすじを書くならこんな感じである。簡潔に書くと修羅場に巻き込まれたが正解。ただまあ迂闊に一人でふらふら歩いていたのもよくなかった。昼食を取った後ブライアンは用事があるからと、すぐ何処かへ行ってしまい(今思えば告白だったんだね)、ジェディディアはなら兄に稽古をつけてもらいに行くと訓練場へと行ってしまったのだ。

こんなことになるなら大人しくどこかの女子グループのところに同伴させてもらえればよかった。彼女たちとお昼を一緒にすればこんなことに巻き込まれずに済んだのにな。ただしギリギリまで時間を搾取される上に地雷がどこにあるか不明という点があるが。どっちもどっちな気がするけれども。



「ご機嫌麗しゅう、グレイシー様。良い趣味をしていらっしゃいますわね。」


「ご機嫌麗しゅう、サンドラ様。まあ、私の散歩が趣味だと知っていらしたの?うふふ、薔薇が見頃だとブライアン様から聞いていたでこちらの方へ来たのです。ありがとうございます、とても健康的で良い趣味でしょう?」



「ええ、ええ。森林に囲まれてお育ちになったグレイシー様にはとってもお似合いなご趣味ですわ。」


「ふふ、サンドラ様のようなステキなレディを目指しているので、そのように私の趣味を言っていただけてとても嬉しいですわ。」



少し空気が和らいだ気がする。誰だって褒められて悪い気はしないだろう。

出だしから覗き見なんて良い趣味してるな、と言われてしまっては、ねえ?世間体的に断じてよろしくはないので。覗き見楽しいけど!楽しいけど曲がりなりにも貴族だし、商人でもあるけど!商人は情報が命だから覗き見紛いなことたくさんしてるけど!いやそれでも覗き見の趣味があると吹聴されたらたまったものじゃない。

たまたま薔薇が見頃だとブライアン様に聞いていたからこっちに来たんですよ〜、ここに来たくてきたわけじゃないんですよ〜、ただ通りかかったんですよ〜他意もなければ、偶然なんですよと釘を刺しておく。

じゃないと絶対評判落として婚約解消の道になりかねないから…

ああ、早くブライアンと結婚したいな〜、そうすればこういう嫌味合戦から解放されてるんじゃないだろうか?いや結婚してもこういうことあるんだろうな。むしろ結婚してからが本番かも…ウッ想像しただけでも吐きそう。



「グレイシー…」

「どうかいたしました、ブライアン様?」

「あ、いや。覚えててくれて嬉しいなって…。あとで薔薇を一緒に見に行かないかって誘いに行こうと思ってたところだったんだ。」



「まあ、まあ!私、今とても嬉しいです。ブライアン様が私のことを誘おうとしていてくださったなんて!」


「うん、僕も、覚えていてくれたこともそうだけれど、今グレイシーが喜んでくれていてとても嬉しいよ。」



そう言ってブライアンは私の手を取った。たったそれだけなのに、心拍数が跳ね上がる。う〜ん今日が私の命日かな?そろりとブライアンの顔を見ようとして目が合う。目があっただけできゅんきゅんしてしまう。ここにジェフがいたら絶対に気持ち悪いと言われてたであろうがいないから問題ないのである。

未だにぎゅっと手を握られているが手汗がやばい気がする。ああ〜心臓が張り裂けそう。こんなにドキドキ言ってるのに周りには聞こえないんだから、人の身体ってすごいよなあ。




「ちょっと!私を忘れないでくださる?!」



あ、ごめん。サンドラ様の存在忘れてたわ。








「僕はグレイシーのことが好きだ。グレイシーとしか結婚しないし、付き合うつもりもない。それにさっき言ったように海の女神ティティア様と大地の女神ガティア様に誓った身だ。だから、ごめんね。」

「ブライアン様…!」



え、え〜めっちゃ嬉しい。今なら死ねる。婚約した当初は婚約していいの?とか色々気遣ってくれてたというかあれは私と婚約したくなかったのでは?とか思うことはたくさん実はあったから、こうやってブライアンが私のことを本当に好きかどうかはわからない。だけど私以外と結婚しないと言ってくれたことは本当に嬉しい。

ブライアンは私が死んだら私以外と付き合うだろうし、結婚するだろう。そりゃそうだ。だってこんなにステキな人だもの。でも、こうやって言ってくれることがすごく嬉しい。例え貴族的戦略の一環でパフォーマンスだとしても、私はブライアンのことが好きだし、もしくは恋に恋しているからブライアンのことが好きな自分が好きなのかもしれない。なんせ恋愛偏差値がゼロ。恋に恋する女だよそれと言われてしまえば否定はできない。

ただ、心はきっと正直だと思いたい。ブライアンの一挙一動でときめいたり、ドキドキしたり、落ち込んだりしてる私の心には素直でいたいのだ。まあお前は捻くれ者だとよく言われているがそれはそれとしておこう。


サンドラ様筆頭にブライアンのことが好きな人、ブライアンのことを狙ってる人はたくさんいる。その人たちを敵に回すような行動は賢くはないだろう。長年女社会で生きてきた私にはそれがよくわかる。だからサンドラ様、もう少しだけブライアンといちゃつかせて。後生だから!待って!覚えてなさい!!ってハンカチ噛み締めながら走り去っていかないで!!!

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