自分とまったく同じ視点の人はいない。
「いまは小説をスマホで読む人が多いんだけど、パソコンと違って、スマホ画面だと粗筋まで表示されないんだ」
見てごらん、と
作品のタイトルの下には、作者、連載中、ジャンル、小説情報と表示されている。
「粗筋を読みたければ、小説情報のところをタップしないと表示されない。その手間が煩わしいんだよ」
「それくらいすればいいではないか」
「作品が幾万もある中、一つずつ確かめるためだけに表示して粗筋を読まないといけない。それで読みたいと思えるかは別だから。内容が書いてあるタイトルは読む側としては有り難いんだ」
「タイトルに粗筋を書くから長くなるのだな」
納得したような顔で陽翼はスマホを返した。
「そんなに簡単じゃないんだ」
受け取った蓮理は、アプリを閉じてポケットに入れた。
「どういうことだ」
「書店を想像してほしいんだ。本棚にはたくさんの本が並んでいる。どの本の背表紙にも、粗筋のようなタイトルがついているんだ。たとえば『最愛の人の姿形が変わってもその人を見つけ出せるかの話』とか『死んだ親友が生まれ変わって出会った輪廻転生の話』などなど。作品の内容はわかるけど、購買意欲も読む意欲も沸いてこなくなる。そうは思わない?」
「知識欲や好奇心が削がれてしまうのだな」
「そう。だから、長すぎると地雷臭がすると嫌煙されるし、口コミもしにくい。ネット検索もしづらい欠点もある。理想は『短いタイトル〜長いサブタイトル』かな。ぼくの好みだけどね」
「そういうものか。それにしても蓮理がそのような、転生小説が好きだったとは知らなかった」
「アニメの影響かな。小説が原作だと知って、それから読み始めたんだ。平凡な人が異世界に転生し、何気ない技能で無双する異世界転生ものは人気ジャンルなんだ。異世界転生って憧れるよね」
「そうなのか?」
蓮理の言葉に反応して、陽翼は一瞬大きく目を開けた。
「うん。変、かな?」
「変ではない。が、面白いことを言うなと思っただけだ」
蓮理は少しホッとした。
馬鹿にされると内心思ったからかもしれない。べつに笑われたってかまやしないけれど、彼女にだけは笑われたくないと思ったのは事実だった。
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