第22話 女三人集まれば・・・

「アル・・・?、入るわよ?」


こ、この声は・・・よく聞いてた声だ。ま・・・まさか!?


「入りますよ?、良いですか?」


「あ、はい。・・・ど、どうぞ」


そういうと、ガチャッと音がしてドアが開いて二人入ってきた。

最初に入ってきたのは、見知らぬ方だが身なりよい金髪のイケメン男性だ。

そして、後から入ってきたのは・・・やはり――


「フィオナ・・・様、お久しぶりです」


「アル、お久しぶりですね。元気でしたか?」


「は、はい、お陰様で・・・。今回は無茶をしてしまい、結果ご迷惑をおかけする事になりましたが・・・」


「だいぶ無茶をしたようですね・・・。私も心配したんですよ・・・だから私はいつも、討伐依頼は止めて欲しいと言っていたじゃないですか」


「そうでしたね・・・これからは、今以上に気を付けるように致します・・・」


「お願いしますね、アル」


「はい、分かりました。あの、それでこちらの方が・・・?」


何故、俺がここまで敬語をつかっているか・・・それはフィオナが貴族になったのは勿論、彼女の前に旦那と思われるイケメン男性が立っていたからだ。すると、その男性が挨拶をしてきた。


「私は、シェラード辺境伯爵が次男、ジョゼフ・フォン・シェラードと申します。そしてフィオナの夫になります。どうか、よろしくお願いしますね」


「ご、ご挨拶が遅れて申し訳ありません!。私は冒険者をしております、アルと申します。この度は、助けて頂き誠にありがとうございました。そして、後ろに控えているのは猫人族のエメルダ、ダークエルフのリオノーラと言いまして、私のパーティメンバーになります」


後ろに控えていた彼女達も、同じ態勢で頭を下げている。

貴族への挨拶は全く分からないので、取り敢えず片膝を着いて挨拶したのだが、そう挨拶すると、彼は自分も膝を着き俺に話しかけてくれた。


「それよりもアルさんにお二方、頭を上げて下さい。私は王族ではありませんので、そこまで丁寧なご挨拶はして頂かなくても良いのですよ」


「そ、そうなのですか?。私は平民出身なもので、貴族様への挨拶などに疎いもので・・・」


「気にしないで下さい。逆に私は、そういうのが好きではないのです。堅苦しくて嫌なんですよ。できれば、私やフィオナにももう少し砕けた話し方にして頂けると、私としても嬉しいのですが・・・」


い、いや、さすがに話し方はマズいだろうに・・・


「そ、そうなのですか?。ですが、言葉使いはご容赦下さい。しかし、ジョゼフ様もラインハルト様も私が思う貴族様とは、少し違う気がします・・・あ、すみません、失礼なことを言ってしまって・・・」


俺はつい、思ってることを口にしてしまい、慌てて謝罪した。

しかし、ジョゼフ様は笑顔を崩さずに話しかけてくれた。


「ラインハルトがアルさんの事を気に入ってしまったみたいで、逆にご迷惑かけてませんか?」


「い、いえ、とんでもない!。それに今回は、本当に助かりました!」


「それなら良かったです。それでは、久しぶりにフィオナと話したいこともあるでしょうし、私は先に戻りますが、ゆっくりして行って下さいね」


そう言って、ジョゼフ様は退室した後、俺はふぅ~~~~~~~っと息を吐いた。

でも、やっぱ良い人だな~・・・フィオナ、良い人に見染められたな~と思っていたら――




「アル・・・・? ところで、この女性二人とはどういう関係なのかしら?」


フィオナは、壁際で静かにしていた彼女達を見ながら、俺に話しかけてきた。

おいおい、瞳のハイライトが消えてるぞ・・・こ、怖い怖い・・・


「え?、あ、ああ、彼女達は俺のパーティメンバーだ・・・です」


「そんなこと、さっき聞いて分かってるわよ!そうじゃなくて~・・・・・・ハッ!、まさかアルって亜人が好きなのかしら・・・」


俺もつい、昔の様な話し方になってしまったって焦ったが、フィオナはそんな事気にならないのか、何やらブツブツ言っている。


いや、確かに亜人は好きだが、だからと言ってその為に集めたわけじゃないぞ!本当だぞ!!

エメルダとリオノーラは、慌ててお辞儀をするがオドオドしている。ま、気持ちは分かるけどね・・・


「あ、あの!、あたしはアルさんに危ないとこを助けて頂いて・・・それで、あの好きに・・・ごにょごにょ」


「私は、アルの亜人に偏見が無いところや、芯が強いところに共感を得たまでで、そ、そんな好きとか・・・そういうのは・・・あの・・・」


「・・・・・彼女達、とても綺麗ね。猫耳でモフモフな尻尾の美少女ロリ巨乳に、銀髪ロングのスレンダーな美女剣士。それに彼女達、貴方をとても心配していたわ。とても、ただのパーティメンバーだけとは思えないんだけど・・・?」


「い、いや、本当にただのパーティメンバーだって!。のとかは、まだないから!」


の??まだない??と言うことは、いずれはってことかしら?」


「そりゃいずれは・・・って違う違う!。そういう意味じゃないって!」


「本音が出たわね!。アルはハーレム作ってウハウハしたいわけね!?。男なんて、みんなそうなのね!。美女を侍られたいんだわ!!」


「なんだよ、そのウハウハって!。そんなこと言ってねえだろー!?。ってか、それ絶対にジョゼフ様には言うなよ・・・」


「え?、アルさんってハーレム作ってたの?。なら、私が最初に仲間になったんだからハーレムランク1位ね!♡」


「おい!、そのハーレムランクとかって何だよ!?。ってか作らないからな?、そんなの!」


「じゃ、私はハーレムランク2位か・・・冒険者ランクより上だな、悪くない♡」


「意味わからん・・・。ってか、俺の言葉は誰の耳にも届いてないのか!?、聞こえない?、ねぇ聞えてないの?」


「ま、冗談はさて置いて・・・」


「さて置かれたよ・・・」


「エメルダさんにリオノーラさん、こんなハーレム好きでエッチなアルですが、心は優しい人なので、これからも一緒に居てあげてくださいね。お願いします」


急にしおらしくなったフィオナだが、今さりげなく俺をディスったよね?、まだ引っ張るの?。

それよりも、エメルダ達は急に畏まりフィオナに向き直る。


「はい、お任せください、フィオナ様。アルさんは私達が必ず守ります!。そして、いつかお嫁さんになります!」


「私も誓おう。決して、彼の元を去ることはしない。例え、アルが私達の元から去ろうとしても、決して逃がさない!」


それってさ、二人とも俺の意思を全く無視してるよね?。ってか、お嫁さんとか絶対逃がさないとか、ちょっと怖いんだけど・・・それ。


「それを聞いて、私も安心しました」


安心しちゃうの?、心配してくれないのね・・・。


「あ、それとアル。貴方の剣ですが、もうだいぶガタが来てるわね」


「え?、そう・・・?。まだ使えると思うんだけどな・・・」


「先程見せてもらったんですが、刀身にヒビが入っているわよ。あのまま使ってたら、いずれ折れると思うの。それが戦闘中だったら、致命的よ?」


俺には身に覚えがある。多分、今回のホブゴブリンの攻撃を受けた時に入ったんだろうな。


「う・・・、確かに・・・。俺は魔法が使えないから、剣が折れたら何もできないな」


「これを機に、討伐系の依頼は・・・いえ、冒険者を辞めたらどうかしら?」


「え!?、それは出来ないよ!。折角、彼女達もパーティに入ってくれたのに、辞めるなんて考えられないよ!」


「やっぱり、そうよね・・・・・そこで、私達からプレゼントをしたいの・・・。受け取ってもらえるかしら?」


「え?、私達からって・・・それってジョゼフ様とフィオナからプレゼントって事?。いや、それはさすがに・・・。ただでさえ、俺は助けてもらっているのに、更にプレゼントなんて受け取りないよ」


「貴方から婚約祝いにプレゼント貰ったでしょ?。そのお返しってことでどう?」


フィオナはこれ見よがしに、胸に付けているブローチを見せてきた。

あぁ、ちゃんと付けてくれていたんだな、俺は少し嬉しくなった。しかし、


「いや、それおかしいだろ?、婚約祝いのお返しなんて聞いたことないぞ?」


「もうっ!、いいの!!。私が贈りたいんだから、素直に貰っておけばいいの!!」


「そう言ってくれるのは嬉しいけど・・・でも、物にもよるぞ?。あまり高価なものは受け取れない!。話の流れから、プレゼントの中身は見当がついたし・・・」


「大丈夫、まかせて!。私は、一切お金払ってないから!」


「な、なんか微妙な言い回しだな・・・」と、俺はジト目でフィオナに見る。


「それに、これはジョゼフ様から持ち掛けられた話なのよ。だから、アルは気にしなくていいの!」


「いや、尚更気にするわ!。俺はジョゼフ様に、そんな事までしてもらう事何もしてないぞ?」


「十分してくれたわ。それは、私を今まで貴方が守ってくれたから・・・。だから、私はジョゼフ様と婚約をすることが出来た。これは、貴方のお陰なの」


「フィオナ・・・・・・」


「だから、これはジョゼフ様と私からのプレゼントなの」


そういうと、ドアがノックされ侍女と思われる女性が二人、部屋の中に入ってきた。

二人がかりで手に持ってきたものは、一振りの剣であった。




「お、おい、まさかこれを・・・?」

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