第17話 ムフフ♡

次の朝、俺は宿屋のベッドの上で目を覚ました。まだ、少し酔いが残っている気もするが、気分は悪くない。

そして・・・、ベッドの上には俺だけではなかった。俺はエメルダとリオノーラに左右で挟まれていた。


片や、豊満な胸を押し付けて、足とモフモフな尻尾を絡めてきている。

片や、シルクの様な肌と慎ましやかな胸が、また何とも心地よい。


残念ながら?裸ではないが、横になっている俺にしがみ付いている下着姿の二人。何故、こうなったか・・・。それは、昨夜の乾杯の時まで遡らなければなるまい・・・。





「アル~、飲んでんの〜?♡」


あの乾杯の後、エメルダは1杯目のエールから早くも酔い始める。前にも話したが、彼女は好きな人とお酒を飲むと、何故かフェロモンが出てしまい俺へと絡み始めるのだ。とまあ、ここまでは想定内だったが…


「飲んでるって~!・・・ってかエメルダ、いくら何でも酔うの早過ぎだぞ?」


「あら?、お姉さんにその口の聞き方はどうなんでしょ~ね~?。ちゃんと、エメルダって言ってご覧なさ~い?」


そう、彼女は酔うとお姉さんキャラに変わるのだ。ま、年上だし良いんだけどね。

それに以前、二人で飲んだ時は危うく貞操童貞の危機だったし・・・。


俺は店員を呼んで、二杯目のエールを頼んだついでに、ツマミもいくつか注文しておいた。

エメルダもクピクピ飲みすすみ、1杯目を空けると・・・


「あ~、店員さぁ~ん!、あたひもエールお願い~!」


「あ、エールじゃなくて水でお願いしま~す」


「あによ、あたひが飲んじゃいけらいっていうの〜?」


「そうだよ、ここじゃ迷惑かかるだろ~?」


「ふふ、じゃあ人目が無いところなら良いのかひら~?」


「リ、リオノーラ、助けてくれ!」


しな垂れかかってきたエメルダを押し返し、俺はリオノーラに助けを求めたのだが、彼女は彼女で何故か下を向きながら、何やらブツブツ呟いている・・・


「・・・・・わたしなん・・・どうせ・・・・ルフじゃなに・・・」


「お、おい、リオノーラ??大丈夫か?」


「・・・・アル・・・、アル殿~~~~・・・シクシク」


え!?、リオノーラってもしかして・・・泣いてんの?。もしかして泣き上戸なのか?。お前もか・・・嘘だろ!?。

しかもアル殿って・・・、シラフの時と全然キャラ違い過ぎだろ!


しかし、昼間の凛としたリオノーラも好きだが、この甘えた感じの彼女もまた・・・これがギャップ萌えキュンキュンってやつか・・・ん?、ギャップ萌えって何のことだ・・・?


ま、それは置いといて・・・、このままじゃ収集がつかん。

一旦部屋に連れて帰るか。ここじゃ、他の人の目が痛すぎる。


「すみません~、この酒とツマミって部屋に持って行っても大丈夫ですか?。支払いは、後で必ずしますから!」


「おぅ!、良いぞ―――!。支払いは、明日の朝でも構わん!。ただ、部屋でヤるなら声は気を付けてくれよ!」


「しませんから!!!」


そう、マスターはニヤニヤしながら了承してくれた。いや、本当にシないけどね?。

俺はエメルダに肩を貸し、リオノーラの手を引いて各部屋に連れて行こうとした。


しかし、エメルダもリオノーラも俺の部屋に行くと駄々をこねて騒ぐので、一先ず俺の部屋に入る。

その後、酒と頼んでおいたツマミを持ってきて続きを始めた。

今、エメルダは俺のベッドに腰かけて上半身を横に倒してこちらを見ている。


「もぅ~~~~アルったら、自分の部屋に連れ込んで何するつもりよ~?。あ、するつもりなのよね?」


エメルダは、既にエロ猫になっている。ちなみに、彼女はグラマラスな体つきをしている。可愛いし胸も大きい。猫耳だし、尻尾も猫なのにモフモフしている。


い、いかん・・・今まで鋼の理性で耐えていたが、こうも露骨に来られると流石にマズイ。エロフォロモンが今になって効いてきたかも・・・

俺はエメルダに水を渡そうと、彼女を起こしてコップを差し出した・・・が、上手く掴めなかったのか、コップの水が零れてエメルダの服を濡らしてしまった。


「あっ!、悪ぃー!」


「きゃん!♡、つめた~~~~い。早く脱がなきゃ♡」


彼女は、これ幸いと服を脱ぎだす。

慌てて俺はそれを止めようとしたが、急に後ろから誰かに抱き着かれてた・・・誰かって、リオノーラしかいないよな。


「アル殿~~~~、私はこのままでいいのでしょうか~・・・シクシク」


普通だったらウザいようなこの状況も、女性関係が少ないアルには何とかしてあげようという気持ちから、一生懸命相手してしまうのだ。


「リオノーラは、今のままでいいんだ!。ダークエルフだからって卑屈になるな!。それにお前は強くて綺麗だから自信を持て!。俺が言うんだから、間違いない!!」


全く説得力ゼロの発言であるが、お互い酔ってる訳で・・・。

もう、自分の中でしっちゃかめっちゃかになっていた訳で、もう何が何だか・・・。


「私が綺麗・・・綺麗・・・・・アル殿~~アル殿~~~~好きです~~~~♡」


「アル~~~~~、早くベッドの上においでよ~~♡」


段々、おかしな方向に来てるぞ、おい・・・

取り敢えず、この場から逃げないと・・・、と思うがリオノーラが思いの外抱き着く力が強くて抜け出せない。


ダダダッ・・・・ドサッ!

リオノーラが俺に抱きついたまま、ベッドにダッシュして倒れこむ。


エビぞりになったままベッドに押し倒された俺は、ベッドの上で獲物を待ち構えるヘビの様に笑みを浮かべているエメルダによって捕まえられた。


前にはエメルダ、後ろからはリオノーラ。

もう、頭の中はクラクラしてしまって、何も考えられなくなってしまった。

二人からは、堪らなく良い匂いがしてくる・・・


酔いとフェロモンの影響も手伝って、俺はベッドの上に倒れたままボーっとしていた。それを逃さず、エメルダが擦り寄ってきていきなり唇に・・・


チュ・・・チュチュ・・・・ウフ・・レロ♡


え?!、何・・・だ・・・?。キスされたのか?

だが、俺のファーストキスが!とか一切考える間もなく、キスってこんなに簡単にされちゃうものなの?って、そればっかりだった。


エメルダが唇を離すと、お互いの口と口の間に糸が・・・

そして妖艶な笑みを浮かべ、俺の視線から消えていく・・・


ポーッとなってエメルダを見ていたら、フッと目の前が暗くなったかと思ったら、再び唇に何かが触れた感触があった。それは、エメルダとはまた違う感触がした。


相手はリオノーラだった。彼女がトロンとした目でエロティックな笑みを浮かべ、いつの間にか上着も脱ぎ棄てていた。


ウォーーーーーーーーー7ヤバイぞーーーー!!!

俺だって男だから、性欲だったあるさ・・・。ここまでされたら、俺だって我慢の限界が来る・・・堤防が決壊しちまう!!


そうだ!!。これはいよいよ、俺も大人の階段を登る時が来たのだ!。

据え膳食わぬは何とやら・・・それが今なら、このチャンスを絶対ものにする!。

俺は急いで、上着を抜ごうとした・・・


          ・

          ・

          ・


が、しかし得てしてこういうチャンスは、ものに出来ないのが世の常である。

俺がやる気を出したにも関わらず、気が付くと二人は俺を左右からがっちり抱きかかえて、既に健やかな寝息を立てている。


くそっ!、これで二度目だ!!。

はぁ~、でもまあ残念な気持ちもあるけど、少しホッとした気持ちもある。


明日からも今までの様に冒険しなくちゃいけないんだし、三人の関係が変わらなかったことに安心したのだ。明日になれば、彼女達は今夜のことを覚えちゃいないだろうし。


まったく・・・ふぅ~~

仕方ない、俺も寝るか~。しかし寝るとなると、寝返りや何やらで隣に寝ている者の胸に、手が当たることは至極当然の事だな、うん。これは故意でなはい、不幸な事故なのだ。



俺はその幸せな感触を楽しみながら、今夜は眠りについたのだった・・・










しかし、俺が寝れたのは薄っすら空が明るくなるころだった・・・・

寝れるわけね――――――だろ――――――――――!!!

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