最底辺のソロ冒険者、パーティを組む~亜人の女の子と戯れたい~

士郎

序章

第1話 プロローグ

「ふぅ~、今回はこんなもんかな。これで依頼は完了~っと・・・・・・、ん?」


俺の名前は、アルカディア。生まれ育ったベレットの人やギルドがあるシグマの仲間からは、アルと呼ばれている。

生まれは近くの小さな名も無き村だが、今は少し離れている街を中心に冒険者をしている。


まあ、冒険者って言っても最底辺のランクFだが・・・。

だからギルドで受けられる依頼も、薬草などの採取物が殆どだ。


今日もこうやって山に、依頼されたアサギリ草を採取に来ている。

アサギリ草は回復ポーションの材料だが、そのままでは殆ど効果が無い。

錬金術師などが調合して初めてポーションになるのだ。


「これ・・・、月夜草だ!」


月夜草は満月の夜だけに咲くもので、これの根の部分がマジックポーションの

材料の一部になる。


マジックポーションは、その名の通り魔力回復に効くポーションだ。

採取量が極めて少ない薬草の為、ギルドにて常時高価買取をしてる


『ラッキーだな。これ売れば、フィオナに・・・プレゼントを買ってやれそうだ・・・』


俺は、そう心の中でつぶやいた。

フィオナは、俺の幼馴染みで同い年の18歳。栗色の肩まで伸ばした髪に、クリッとした目。胸も程よく成長しており、見た目は結構可愛い。


ただ、来月には隣町デボネアの貴族の三男と結婚の運びとなっている。その貴族の父親は、ここら辺一体を治めている辺境伯であるため、フィオナにしてみれば玉の輿である。


小さい頃は二人で良く遊んだし、仲も良かった。このまま一緒になるんだろうな・・・と漠然と思っていたものだが、現実はこんなもんだ・・・

そのフィオナからは、意外とあっけらかんに告白された。


「アル、私ね・・・来月、結婚することになったの・・・」


「へ・・・?、け、結婚・・・するの?」


「うん・・・、アルには悪いと思ったけど、私も18になったしそろそろ・・・」


「悪いだなんて・・・そ、そうだよな・・・18だもんな・・・

 良かったじゃないか、貰い手がいてさ・・・はは」


「お陰さまでね・・・誰も貰ってくれそうに無かったからね・・・ジーーーッ」


彼女のジト目が俺には痛かった・・・

フィオナの事は好きだけど、今の俺は最底辺の冒険者で収入なんて毎日を食いつなぐだけで精一杯だ。


俺は両親が早くになり、フィオナや回りの村の人々に助けてもらいながら今日までやってきた。

そんな俺に、貴族との結婚はやめて俺と一緒になってくれ!、なんて言える訳も無い。


「おめでとう、フィオナ。結婚しても俺や村の事は、忘れないでくれよ・・・」


何とかこれだけは言えた。強がり?、そうだよ強がりだよ、やせ我慢だよ!

正直、泣きそうだったけどグッと堪えて、笑顔で言ってやったさ!


「・・・・・・ありがとう。村の事もアルの事も、絶対忘れないよ・・・」


少し寂しそうにつぶやいたフィオナは、そのまま振り返って自分の家のほうに向かって歩いていった。

こちらを一度も振り向かずに・・・


『終わったな~・・・  』


これ以外、何も考えられなかった。

俺には彼女を幸せに出来る自信もなかったし、そもそも彼女が俺の事をどう思っているかさえ聞けないヘタレなわけで。


それなら、せめてフィオナが幸せになってくれる為に俺が出来ることをしなきゃ・・・

・・・本心は、貴族の三男が羨ましくて羨ましくて、悔しい思いしかない。


そんなに簡単に気持ちを切り替えることは出来ないけど、それでもウジウジとした自分を見せたくないから、外面だけでもスッパリ割り切ったように見せなきゃな!


いずれ、この気持ちも落ち着くだろう・・・きっと、そうだよ。

そんな思いを胸に、今日もギルドの依頼をこなしていたのだ。




依頼のアサギリ草と偶然見つけた月夜草を皮袋に入れて、山道を下りだした。

だいぶ下りてくると、街の門の前に見知った衛兵が二人立っている。


「おう、アル!。無事に帰ってきたかーー!」


「うむ、今日も何事もなく戻ってきたな、重畳・・・」


「ダンさん、サージェスさん、ありがとうございます!。只今、戻りました!」


ダンさんは元騎士ということで、がっちりした体格にヒゲが似合うイケメンだ。

サージェスさんはパッと見女性にも見えるが、現役のランク2の冒険者だ。


「依頼は達成してきたか?」


「はい、お陰様で!。ついでに、これ見つけちゃいました!」


と、アルは布袋から月夜草を取り出した。

二人は少し驚いた顔をして、


「お!、月夜草じゃねえか!。珍しいな!」


「アル、あまり人前で見せるなよ。誰が見てるか分からぬからな」


アルは、慌てて袋の中にしまいこんだ。

月夜草は貴重な為、横取りや酷い時は強引に奪われたりすることもあるのだ。


「すみません、うれしくてつい・・・」


「まあ、ここには俺らしかいないからな。街中ではするなよ?」


ダンさんはそう言って、片眼を閉じた。

この二人は、本当にいい人たちだ。俺みたいな底辺の冒険者にも、分け隔てなく接してくれる。


「では、俺はギルドに行ってきます。お二人も頑張ってください!」


「「おう!」」


そういって、二人が片手をあげたのを見届けて、俺は急ぎ足で門をくぐり抜けてギルドに向かった。

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