魔法少女は少女を目指した~恋した魔法少女の正体がもしも女の子みたいな美少年だったら?~

あさままさA

⬛第一章 はじまりの季節

第零話「誰かのために力を尽くして」

「――無事でよかったよ! それじゃあね!」


 ギュッと目を閉じた笑みと別れの言葉を残し、少女が夕暮れの空へ消えていく。


 つい先ほど――信号無視したトラックに轢かれかけた結人は、突如として少女に命を救われたのだ。


 一瞬の出来事だった。


 迫りくるトラックに大の字で立ちはだかり、少女は結人を守ってトラックと正面衝突。


 本来なら結人もろとも吹き飛んでいるはずだが――しかし、少女は怪我一つなくその場に留まり、トラックを停止させていた。


(――ほ、本当にその方法しかなかったのか!?)


 非現実的な光景に思わずツッコんでしまう結人。

 遅れて助けられたお礼を言わなければと口を開こうとする。


 しかし、少女はすでにその場を去っていた。

 結人に笑みと、別れの言葉を残して。


(行っちまった。お礼くらい言わせてくれればいいのに)


 高い跳躍で昇り、標識や屋根を足場に空を駆ける少女。

 結人は小さくなっていくその影を茫然と見つめていた。


(すごく綺麗な女の子だった。今まで会ってきた誰よりも。それに俺なんかを助けるために身を挺して……カッコいい人だなぁ)


 結人の心は一瞬で奪われ、憧れた。

 そして、強く願う。


 ――叶うならば、もう一度彼女に会いたいと。


        ○


 ――さて、こんな噂がある。


 街を颯爽と駆ける少女の姿が目撃されている。

 花弁のような可愛らしい衣装を身に纏い、人を越えた力を振るう。


 困っている者を助け、悪を裁く正義の存在――その名を、魔法少女。

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