セカの街の下級冒険者9

雑貨屋労働者の扉を開ける。

「ランさん、おはようございます」

「お、ゴートかおはよう。今日は買い物か?」

ランさんが赤い髪をかきあげこちらを向く。今日も綺麗で少し緊張する。ロイさんも居るようだが集中して気がついていないようだ。


最初に訪れたときは緊張していて名前も聞いていなかったのだが、先日改めて名前を教えて貰った。因みにおじいさんはロイという名前らしい。

「作業用の手袋を買いに来たのと、武器について相談が有りまして。先日の依頼で確りとした武器の必要性を感じまして。鉈を作って貰った鍛冶屋を紹介して貰えないかなと」

「なるほどな。作業用手袋ならそこの棚に有るから見ると良い。鍛冶屋の事なら直ぐにでも紹介してやるよ。実は近所なんだ。行きたいタイミングで声をかけてくれ」

鍛冶屋が近所だとは知らなかったな。作業用手袋の中から自分にあったサイズを選びお金を払う。

「ランさん、早速ですが案内して貰っても良いですか?」

「おうよ。おじいちゃん少し出るから。ゴート着いてきな」

ロイさんは一切反応してないが、ランさんはお構いなしに店を出る。


「鍛冶屋は昔ながらの知り合いがやっててな。お互い色々融通が効くんだ。勿論腕は確かだから安心して良い」

店の出て本の数件歩いた所にその鍛冶屋はあった。

「ここがゴートのナイフと鉈を用意して貰った店、鍛冶屋の『黒鉄』だ。」

ランさんが躊躇い無しで扉を開き中に入っていくので慌てて着いていく。すると金髪に優しい顔立ちだが、身体を鍛えているのがわかる程度には体格の良い男性が店番をしていた。

「お疲れケニー。なんだなんだ随分と暇そうじゃないか」

「ランこそお疲れ様。少し前まではお客さんもいたしタイミングだよ、タイミング」

昔馴染みと言うのは本当らしく、二人とも気心知れた仲なのが会話から伝わってくる。

「それなら良いんだけどさ。あんたはたまにしれっとサボるからね」

「流石にもうそんなことしてないよ。親父の後を継ぐのも遠くないんだしそれよりも後ろの方はどなた?」

「そうだそうだ、この子がこの前お願いした解体用ナイフと鉈を買った冒険者の…」

「ランさん自己紹介は自分で。ケニーさん初めまして九級冒険者のゴートといいます。解体用ナイフや鉈にはお世話になってます。よろしくお願いします」

「鍛冶屋黒鉄のケニーです。ゴート君だねどうぞよろしく。それにしてもラン、多少年下とはいえこの子は失礼なんじゃない?」

「ケニー、ゴートはこう見えてまだ十五歳だ」

「そうなのか?体も大きいし、大人っぽいからてっきり少し下くらいだと思っていたが十歳以上年下とは。ゴート君誤解してごめんね」

「いえ、気にしてませんので」

嘘だ。少し気にしてる。というのも最近判明したのだが俺一部の知人から二十歳位だと思われていたらしく少し驚かれたのだ。ちょっと老け顔なのだろうか。

「まあ歳のことは置いといて、ゴートが武器を作りたいらしくてね。解体ナイフと鉈を使ってみて、ここに頼もうと思ったんだってさ。相談相手になってやりなよ」

「そこら辺の商品は俺が打ってるから嬉しいね。わかった俺で良ければ相談に乗ろう」

「んじゃ後は頼んだよ」

そう言うとランさんは自分の店に戻るのだろう反っていった。


「ゴート君、改めて宜しく。早速だけどどんな武器が欲しいんだい?」

「こちらこそよろしくお願いします。実は今自分で作った投げ槍で間に合わせてたんですけど、このサイズの槍って有りますかね」

「このサイズだと在庫には無いかな。でも新しく作るのは簡単だと思うよ。全体を金属にする、もしくは刃の部分だけとか色々有るけどね」

「因みに全体を金属にするとどのくらいかかりますかね?」

「割と安価な鉄でも十万エルからだね。槍は重さもあるし、下級の冒険者は刃だけの人も多いよ。それなら二万エルから出来るし。柄は木製だけど凄く丈夫だからそうそう折れないよ」

「それならもう少しお金を貯めれば大丈夫そうです!近いうちに買いに来ますので、ケニーさんその時はよろしくお願いします」

「こっちも商売だからお客さんなら大歓迎さ。ゴート君が来るのを楽しみにしてるよ」


槍を買うことを決意して黒鉄を後にする。

取り敢えず二万エルの投げ槍を買うためにお金を貯めないと。


冒険者という職業は本当にお金がかかるなと思いつつ午後から出来る依頼を探しに行くのだった。

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