セカの街の新人冒険者5

冒険者として登録した日から丁度一週間がたった。基本的には一日一依頼。楽な作業だったり体力が余っているときは二つ依頼をこなしたりして冒険者生活を謳歌していた。といってもこなしている依頼は主に農作業なので生活としては昔と似ている。しかし今は仕事をした分収入に繋がるので凄く楽しい。


一週間冒険者として働いておおよその収入が二万五千エル前後。そこから支出として食費や雑費で一万エル。この生活を一月続けたとすると収入が十万エル、食費や雑費で四万エル、家賃が一万エル、二万エルを貯えにまわすと残りは三万エル。

勿論予想以上に稼げることも有るだろうし、逆に想定外の支出もあるだろうけど。


今でこそ日雇いの労働者のような依頼しか無いけど、下級に上がると依頼のなかには狩猟や討伐といったものもでてくる。

やはり冒険者たるもの武器が必要だ。当面の目標は武器、防具を揃えることだな。

今日の帰りにでも武器屋に寄って色々見てみよう。そう決めて今日も俺は農作業へと向かうのだった。



「はい、今日の報酬。見習い卒業までもうすぐで折り返しよ。頑張ってね」

「ありがとうございます!」

受付のお姉さんの情報によるとあと一週間と少しで見習い卒業らしい。

思ったより早い。

これは装備の用意を急がねば。


手持ちは約九万エル。全額使うわけにもいかないから予算は三万程度かな。

というか武器や防具っていくらするんだろうか。そもそも良い店の判断もつかない。困った。

「武器…鉄製なのかな?防具って鎧?動き難そうだな…」

そんなことを考えながら歩いていると急に閃く。

「おやっさんに聞いてみよう!あっ差し入れ買っていかないと」


差し入れのお菓子を急いで買って向かうは初めての依頼をこなしその後も度々依頼を受けている農園である。


「おやっさーん。ゴートでーす。お邪魔します」

おやっさんとはあの依頼をきっかけにすっかり打ち解けた。この前なんてご飯をご馳走になっていて、臨時の従業員のような扱いをしてもらっている。凄く嬉しい。

「おうゴート!依頼か?」

おやっさんの対応も慣れたものだ。でも今日は依頼じゃなく相談しに来たのだ。

「いや、おやっさんに相談したいことがあって。これ差し入れね。あっ冒険者を辞めるとかではないからね!」

なんだちげえのかと豪快に笑いながら座るおやっさん。

「んでどうしたんだ?」


「それがさ、今月中に冒険者見習いを卒業出来そうでね。下級からは採取や狩りの仕事も増えるから丈夫な作業着とか固めの靴、頑丈な鉈やナイフが欲しくてさおやっさんなら良い店知ってるかと思って」

正直俺は自分の目利きを信用していない。何故ならちゃんとした武器を見たのもここ最近で、唯一使っていた志願兵時代の武器は一番質の悪いものだし。

それにぼったくられたとしても気がつく自信がない。

ならいっそ知り合いの贔屓の店を紹介してもらえば問題ないと思ったのだ。

実際例にあげた服や靴が欲しかったというのもある。


「なんだそんなことか。それくらいならお安いご用よ!紹介状書いてやるから待ってな」

おやっさんは従業員に店の場所の地図と紹介状を書くようお願いした後ある提案をしてくれた。

「ゴートよう、もしお前が見習いを卒業したらうちの奴等と肉でも焼いて酒盛りしようぜ!」


とても嬉しい提案だった。


おやっさんには本当にお世話になりっぱなしである。


「是非!その時はよろしくお願いします!」



メモと紹介状を受け取り農園を後にする。


今から酒盛りが楽しみだ。

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