第14話 女は幾つになっても女の子 心だけはね

 不惑四十にしてモテ期到来!?

 と思ったら

「でも、先輩に恋人が出来たんなら、安心して出世してお見合いスルッス!」

 見合いかよ!

 突っ込み方が古いなワタシ。

「恋愛は、面倒な事が多いじゃないですか。好きとか嫌いじゃなくて、同じ目的で進んでいける見合いが良いっす」

 なるほどね。

 それちょっと理解できるな。

 恋愛って疲れるもんね。

 って言って、ふとリュウの手のホクロを思い出した。

 リュウとは今度の金曜日、ご飯に行く約束をしてる。

 今の私とリュウは、恋愛関係なんだろうか。それとも久しぶりに会った同級生なんだろうか。


 ☆ ☆ ☆


 リュウが指定したのは、個室のある和食のお店。少しお値段が高くって、自分ではなかなか行かないお店。

「良いの? こんな高い店」

 つい、こんな事聞いちゃうあたりがヤマシタに言わせると

「女の子らしくない」

 そうである。

 四十にもなる女捕まえて、何が女の子よ。

 って言ったんだけど、

「女の人は永遠の女の子なんですよ。知らなかったッスカ?」

 だって。

 どんな育ちしてんのよ。

「お袋が、言ってました。それと、女の子には優しくしなきゃ、ダメって」

 お母さん、最高です。でも、お宅の息子さん、ちょっと何か違いますけど。

 でも、そんな感じで女の子に接してたらモテるだろうな。事実、社の中ではモテてる。

 若い女の子から見たら多少は頼り甲斐があるようだし、何人かはヤマシタの事好きなんだろうな、と感じては居る。


「お飲み物はどうされますか?」

 大学生かな?

 和服を着た女の子の店員さんが、少し小首をかしげてリュウと私の顔を交互に見た。

 いいな、若いって。

 リュウだって、こんなおばさんよりちょっとでも若い方が良いんじゃないの?

「俺車だし、ノリは酒のまないもんな」

 お、よく覚えてたね。

「では、暖かいお茶をお持ちしますね」

 店員さんが出て行くのを待って、リュウが真剣な顔で私を見つめると、頭を下げた。

「本当にごめん」

 もう、良いよ。そんな風にされると私が酷い事をしてるように思えちゃう。

「もう良いってば」

「うん」

 そして、やってくる沈黙。苦手なのよね。でも、普通二十二年ぶりにあったら、こんな感じよ。

 だって、当時の思い出話が尽きたら共通の話題なんてないんだもん。

 それなのにっ!

 いきなり指輪出してくるとか、ホントなんなの。

 リュウも、持て余したのかお絞りを畳んだり広げたりしてる。

「失礼します」

 救いの女神登場。

「温かいお茶をお持ちしました」

 さっきの店員さん。

 お茶を出してくれる手は白魚のよう。

「では、直ぐにお料理をお持ちします」

「ありがとう」

 静々と退室する店員さんに声を掛けると、凄く可愛らしい笑顔を返してくれた。

 まだ十代かな。

「あの位の子供のいる同級生もいるんだろうね」

 へ?

 そんな顔のリュウ。

「今の店員さん」

「ああ……。そうだな」

 何だかリュウの様子が変。

 え、何。

 もしかして、リュウ子供がいるとか?

 バツイチ

 だもんね。

 居てもおかしくないもんね。

 やだ、急にリュウが遠い人に思えて来た。

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