忘れてた恋

みや(弥也)

第1話 壊れたエアコン 劣化なんて言わないで!

 愛猫シッポはペットショップで預かって貰った。


 部屋の片付けは……。

 まぁ、良いや。

 とっ散らかった物を、ゴミ袋に放り込んで、寝室に放り込んだ。


 来ても、どうせ1時間も居ないんだし。

 ドアを閉めておけば、見えやしないわよね。

 でも、早く来ないかなぁ。

 落ち着かないじゃない。

 オンナひとり、40歳。

 オトコが来るのを、待ってます。


 ☆ ☆ ☆


 ピーポーン。

 やっと来てくれた。


 あんまり遅くなると、シッポのお迎えが遅くなっちゃうから、困るのよね。

「すみませーん。お待たせしました。シルク電気です」

 そう、電気屋さん。

 エアコンの修理を頼んだの。

 昨日の夜、突然エアコンが壊れて動かなくなった。


 友達も、多くがライフステージが変わってしまって頼れない。

 それこそ、20代の頃ならシッポ共々、転がり込める友達もいたんだけどね。

 お陰でシッポと二人、布団の中で仲良く丸まって一晩過ごす羽目に。

 すっごく、寒かった!

 

 そもそも、昨日は踏んだり蹴ったり。

 上司から呼ばれて何かと思ったら、新入社員の頃から面倒を見ていた、あ、仕事のね、後輩君が出世だって。

 しかも、私の上司になるんだって。

 どう言う事?

 

 ☆ ☆ ☆


「シルク電気のタカセです」

「あ、こっちです」

 修理に来た電気屋さん、若くはないけど、背が高くて割とイケメン。

 で、つい、見ちゃうわよ、左手の薬指。

 ない。

 独身なのかな。

 仕事中は外すタイプ?


 LDKでポカーンと口を開けたまま動かないエアコンに、電気屋さんを案内……しないまでも、小さな部屋だもん玄関からエアコン丸見え。


「あー、なるほど」

 電気屋さんは、エアコンを見て言い放った。

「これ結構年代物だな」

 今、私、絶対、顔に出た。

「修理したら動くけど、また、別の場所が壊れる可能性の方が高いよ」

 分かってるわよ。

 それより、この人、何か馴れ馴れしい。

 ちょっと、怖いかも。

「このエアコン、出た当時はデザインが良くて人気だったけど。んー、部品あるかなぁ」

 電気屋さん、ブツブツ言いながら、エアコンをどんどん解体していった。

「あー、やっぱりこれ」

 何だかよく分からない部品を見せられた。

「これが劣化しちゃったんだよ」

 劣化って言わないでよ。


 何だか自分の事を言われているような気がして、今、私、きっと、物凄い顔をしてる、ハズ。きっと真っ赤になってる。だって、とっても熱いんだもん。


 ☆ ☆ ☆


「アキ、見て! あのエアコン、凄く可愛い!」

 12年前、家電量販店で恋人の明典と一緒にエアコンを買いに行った。

 初老の店員さんが、ここぞとばかりに寄ってきた。

「このエアコンは、海外のインテリアデザイナーがデザインした、人気商品でございます」

「ねぇ、アキ、これにしようよ!」

 アキとは友達の結婚式で知り合った。

 付き合って数週間で、実家住まいだったアキが、私の部屋に引越して来て同棲始まった。

 どうして私の部屋だったかと言うと、アキの職場に近かったから。

 私28歳、アキ30歳の初夏だった。


 ☆ ☆ ☆


「おーい、ノリ大丈夫か?」

 え?

 オトコの声でノリなんて呼ばれたの、いつぶりだろう。 

 目を開けると、そこに居たのは。

 電気屋さんだった。

 しかも、ここ寝室なんですけど!

「あ、あの……」

 全く状況が読めない。

「ノリ、ほんと、大丈夫か?」

 何で、電気屋さんが私をノリなんて呼ぶの。

「お前、急に倒れるからビックリして、思わずベッドに運んだんだけど……」

 へっ?

 ベッドに、運んだ?!

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