魔女っ娘探偵♡アルヴァーレ☆☆☆

暗黒星雲

紫色の奇跡

プロローグその①☆ヴァイスとシュシュ

「ヴァイスお姉さま。ここは熱くないですか?」

「あら。人間にとってはこの位が適温なのよ」

「それは承知しております。しかし、私のような氷雪の妖精にはここは熱すぎるのです」


 シャワーを浴びている銀髪の女性。

 バスルームには湯気が立ち込め、彼女の姿はその湯気に隠されてはっきりと伺うことができない。その中をヨロヨロと飛んでいる手のひらサイズの妖精が一人。


 湯の飛沫と湯気に晒され、その氷の翼は半分ほど溶けていた。


「ああ。ヴァイスお姉さま。わたくし、もう限界でございます。このままでは溶けてしまいますわ」

「あら。わざわざバスルームにくっついて来たのは貴方でしょう。シュシュ」

「だってだって。お姉さまと素肌で触れ合いたかったのですもの」

「うふふ。分かったわ」


 そう言ってヴァイスはシャワーのコックを締めた。

 水の滴るてのひらにシュシュを乗せてふーっと一息を吹きかける。


 その一息は白い氷の粒子であり、溶けかけていたシュシュの翼は瞬く間に再生した。そしてバスルームの壁も一気に白い氷で覆われていく。


 生き返ったかのように周囲を飛び回る妖精のシュシュ。そして彼女はヴァイスの肩に止まりヴァイスの首筋に口づけする。


「私の為に……優しいお姉さま。大好きですわ」

「うふふ。ありがとう」


 バスルームの扉を開きバスタオルをまとうヴァイスであったが、その体は白い薄氷で覆われていた。パリパリと氷が割れ周囲に飛散していくその時、ヴァイスの携帯端末から着信音が鳴り響いた。


「室長から……だわ。何か事件があったようね。楽しい時間はこれでお終い」

「事件って! お姉さまとの大事な時間を潰すなんてどんな悪党なのかしら。もうギッタンギッタンにして差し上げますわ!」


 携帯端末で会話しているヴァイスと不機嫌なシュシュ。

 この後すぐに、紺のスーツを身に着けたヴァイスはシュシュと共に夜の繁華街へと向かった。

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