第3話 バレット・リベンジ

「キシャァァァァァ!!!」

こいつは鷲型魔獣のイルグか。空中にとどまっている分面倒なやつだな。

「クロウ!」

「分かってます。」

シュン…

クロウを刀に変化させて戦闘態勢へと入る。

「さて、戦いの腕は落ちてないのかしら?」

「こちとら十数年コイツらと戦ってんだよ。もはやプロフェッショナルだぜ?」

『油断大敵ですよ、ラルス様。』

ガキィン!!

「……斬る…!!」

先手必勝で日丸がイルグへと斬りかかる。だが当たったのは足の方だったようだ。

「下がってて。」

シュババ…ジャキィン!!

「キュォォォォォ!!!」

センは神速の速さで首元を斬ろうとしたが、それでも浅いダメージしか入らない…

「イルグってあんなに固かったか?」

『あまり固くはなかったはずですが…特異固体とかでしょうか。』

俺よりも遥かに強いセンでも斬れないのは何かおかしい…いや、クロウの言う通り特異固体って可能性は十分にあるな…

「ガァァァァァァ!!」

「あいつ…シラリウスに狙いを定めて…!!」

あっちにはセリドもいる…いくらセリドでも守りながら戦うのは難しいか!?

「きゃあっ…!」

ササッ…

「フロート!」

グォン…ドガガガガ!!

「クオォォーーー!!!」

そうだった…センは物を浮かすフロート能力があるんだった…

「恩に着るよ、セン。」

「私はただ助けただけよ。お礼はいいわ。」

後はトドメを刺すだけか…

「クロウ!少し手荒になるが良いか?」

「仕方ないですね…承知しました。」

了承を得た俺はクロウが変化した刀をイルグ目掛けて蹴り飛ばし、頭に刺す。

「クオォォーーー!!!」

もがき苦しむイルグに刺さったままのクロウは元の人間の姿に戻り、強烈なかかと落としを食らわせた

「これで完全なトドメです!!」

ドスッ!!

「ガ…ガァ…」

ズドンッ!!

刺し傷にかかと落としを食らったイルグはそのまま落ちていき、ついに息絶えた。

「よ、ようやく倒せたか…てか良いところクロウに全部持ってかれたな。」

「手荒に使うと言ったのはラルス様ですよ。」

「…………」

相変わらず日丸は黙ったままだ。

「あなたはこれからどうするの?ここにいても危ないわ。」

「移動する……遠くへ。」

「日丸なら大丈夫だよ。日丸はすぐ負けるような男の子じゃないから!」

「そうか、分かった。くれぐれも気を付けて行動しろよ。」

「……分かってる。」

その一言だけを言うと、日丸はすぐに反対側へ消えた。

「じゃあここからはまた手分けして捜索しよう。俺とクロウでこの先を調べる。セリドとセンはシラリウスと一緒に別の場所を捜索してくれ。」

「そっちは大丈夫なの?」

「こういうのには慣れてるからな。すまないが、セリドとシラリウスを頼む。」

「オッケーよ。二人の身は任せて。」

「ありがとう、セン。じゃあ一通り捜索し終えたらこの場所に集合で。」

この言葉を皮切りに両者はそれぞれの道へと進んでいった…


ーゼネル荒野ー


「ここは…センのいた世界じゃねぇか!」

都市部を抜けた先は砂塵の舞う荒野。果てしなく広がる荒野は砂漠とも言えるだろう。

「これじゃ手がかりどころか何も出てこないぞ?」

「進むしかないですよ。それに、「魔法少女の世界」が存在しているなら、かの魔法少女達に会う可能性もありますし。」

「もしかして…ラルスさん?」

おいおい…まさか言った側からいるとかそんなのありえないよな?天野英里華が今いるなんてそんなことはないよな?

「やっぱりラルスさん達だ!またお会いできて嬉しいです!」

やっぱりいた…「噂をすればなんとやら」とはまさにこのことかよ…

「お、お久し振り…」

「あれ?ラルスさんなんか若くないですか?」

「いやな…これには色々事情があって…お前達は何でここに?」

「学校の帰りに皆で帰って、気がついたらここにいて…しかも巻き込まれたのは私と薫ちゃん、リーちゃんだけなんです。」

道理で格好が制服な上に三人だけということだ。全く、この世界は何がしたいんだか…

「この世界はあらゆる世界が融合しているらしいんだ。俺達は、さっきお前達の世界の一部を見てきたんだ。」

「そんな…皆さん大丈夫なのでしょうか…」


「死んでいなければ無事でしょうね。」


背後から声がして振り返ると、そこにいたのは俺達がすぐに目を伏せたくなるような奴だった…

「おや、そこに「世界を飛んでる人間」がいますね。」

「まさか…!?」

そんなはずはない…奴は…奴はあの時俺達が倒したはずなんだ…!!

「お久し振りでございます。セリア・ラストです。」

「おい…何でテメェがここにいやがる…」

「知り合いなんですか?」

「はっ、馬鹿言え…」


「こんな「クソ野郎」は俺の記憶のどこを探してもいねェよ。」


「むっ…」

「気を付けろよ、こいつは何をしてくるか分からねぇからな。俺が奴を引き付けてる間に逃げろ。」

「何だか良く分かりませんが…ラルスさんがそう言うなら、分かりました。」

「おうよ。またどこかで会おうぜ。」

今は彼女達を逃がすだけでも十分だ。こいつの相手はしなくてもいいんだからな…

「逃がしましたか…まぁ良いでしょう。」

「そんで、何で死んだお前がここにいるんだ?」

「私にも良く分かりませんよ。気付いて目が覚めたら懐かしい場所にいたもので。」

「復活したからには大量虐殺でもすんのか?悪いが、この世界はお前が望んでいるほどの人口は無くてね。」

「それもそれで面白いですが、その前に確かめたいことがありましてね。孫は今どうしてます?」

にこやかに見えて気持ち悪い笑顔を振り撒きやがって…目的はセリドを殺すことか…?

「うるせぇよ。もうお前が「孫」だの「娘」だの言う資格はないんだよ!!」

「やはり癪に触る喋り方は変わってませんね。では私自身で探しますか…それもまた楽しいことですし。」

「ま、やれるもんならやってみろよ。ただ、場合によっては…」



「もう一度テメェを地獄送りにするだけだ。」



「そちらこそ、もう一度出来るなら構いませんよ。」

ブゥン…

消えたか…全く決断力の早い奴め…

「このままでは子供達が危ないです。一旦戻りましょう。」

「いや、心配ない。」

「ラルス様…何を根拠に言っているのですか!?」

「落ち着けクロウ。あっちにはセンもいるし、それにセリド達も戦い慣れてる。そして何より…今あいつらの元にはこの世界を作ったシラリウスがいるからな。まだ何も分かってないこの世界の「鍵」を握っている女の子だ。そんな奴までに手を出すことは無いだろう。」

「言われてみれば、確かに…」

「俺達は進もう。奴の恐怖に怯えてたら何も出来やしない。」

「分かりました…セン様達を信じましょう。」

俺達は先も見えないゼネルを荒野を進んでいった。死人も復活してるこの世界…一体どうなってやがる…!?

続く。



はトンメジッャジ・トスロの回次

「ギャァァーーー!!化け物ーーー!!」

「危ない!下がって!」


「(あれ、こいつ性格が変わってる…?)」


「凛条美子です。もう一人は凛条玲子です。」

「もう一人?誰もいないぞ?」

次回「氷輪猛火の兄妹」


「炎の刀…!?」

「妹達に手を出すな…!!」

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