弔い者~真明の旅編~

ざわふみ

一話 修行の旅

 これは三百年ほど昔の日本の話。ある寺に一人の僧侶がいた。名は真(しん)明(めい)、悪霊に憑(と)りつかれた人を元に戻したり、悪霊自体と戦うこともある。


 そんな真明の寺に着物を着た一人の少女が訪れた。

 その少女はヤエという名で、座禅を組みに来たという。


「どうぞ上がってください」


 真明が言うとヤエは草履を脱いで寺の中に入った。

 ヤエはいつもこの寺で座禅を組んでいる。これはいつもの日常なのである。


 そして、いつも通り仏像が置いてある部屋で真明とヤエは座禅を組む。

 二人は五分の座禅を終えると、体勢をくずした。


「すいません、ヤエ。明日からこの寺を閉めることにしました」

「なぜですか、真明さま?」


 真明は淡々と続ける。


「最近、悪霊などが各地で頻繁に出るようになっているのです。わたしの本来の仕事はその悪霊を退治することなのです。ですから、明日から各地に修行の旅に赴(おもむ)きたいと考えています」

「そうなのですか…」


 ヤエは見るからに落胆している。


「安心なさい、ヤエ。あなたは座禅を毎日欠かしたことはありません。ここではなくとも座禅を組むことはできます!あなたの家でみなに教えてあげなさい」

「分かりました、真明さま!」


 ヤエはいつもの笑顔に戻ると、感謝を伝え家に帰って行った。

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