配信者とは、傍聴できる別側面である。

仕事でお客様に向ける顔と気心知れた友人に向ける顔がまったく違うのは、誰しも当たり前として捉えていることでしょう。

ユング心理学では「ペルソナ」……ラテン語で仮面を冠する側面の使い分けですが、こと配信者となると事情が変わります。リスナーという不特定多数に向けた側面が、普段の配信者を知る人が見る可能性もあり得るからです。
台本のない生放送が主体となるタイプであれば、それは最早、傍聴できる別側面と呼べるかもしれません。Vtuberは更にキャラクターという形で別側面を装っており、輪をかけて違いが際立つでしょう……しかし、それでもやはり、側面が違うだけの同一人物に他なりません。

特に本作では、バーチャルでの側面と現実での側面を同名で呼んでいるため、一層同一人物である事実が強固に印象づけられます。恋愛ドラマで見かける「あの人のあんな顔……初めて見た……」と遠目で眺める描写をより踏み込んだ、配信がより身近になった現代だからこその関係性が描かれていると感じました。

その他のおすすめレビュー

羅田 灯油さんの他のおすすめレビュー78