第5話

「なんとか間に合いそうだな。もう俺よりスピーチとか出来るんじゃないか?」

「そうかもね。でもまだ10人くらいしか見てないのだから少し心配ね。」

放課後、講堂借り練習をする日

今回は本番に近くするため、生徒会のメンバーを呼び、会場を暗くしライトを壇上にのみ当てる事にした。

「思ったより狭いんだな。初めて入ったよ。」

「そうね。大人数で入る場所でもないし。」

ここは音響やライトの細かい操作を行う部屋。

講堂の会場入り口の上にあるところで2人で操作していた。

「操作って言うから複雑だと思ったけど意外と出来るな。」

「スピーカーもオンオフはボタン一つ、ボリュームは基本的にずっと同じ。音楽だってかけるのは卒業生入退場と校歌ぐらい。でも本番は状況によって手動で操作しないといけないから簡単でもないでしょうね。」

ライトは別室で起動するので今は壇上に当てて放置している。

本来は放送部の仕事だが今はいないので俺達がやっている。

「この箱なんだ?」

「それはマイクの箱ね、あんまり使わないからここに置いてあるみたいね。」

足元にデカイ箱が置いてある。

見た目はアタッシュケースだ片手持ちを想定してるようだが、中学生が持つには重い。外装がアルミでかなり頑丈そうだ。

「それよりも」

どうにも2番がイライラしている。ここまで感情を出すのは珍しい。

「それよりも?」

「‥あの5番も隠しもしないのね。代わりって言われたのがあんなに嫌みたい。」

生徒会は1番・2番・3番と自動的に配属されるがこの学年の3番はもうすでに放送委員に決まっていたので4番の自分が誘われた。断ったけど。

「彼も、5番の自分が最優先で生徒会に誘われてると思っていたのかしら。

ちょっと考えればわかるでしょうに。」

詳しくは知らないが、5番は生徒会に誘われてとても喜んだらしい。

「まったく‥、言いたくないけど先代の会長が口を滑らさなければよかったものを。」

呆れたように言っている。

どうやら最初の生徒会の顔見せで、前の会長が「良かったよ、君が断らないでくれて。前の2人はすぐに断ったから。」っと口を滑らせたらしい。

「まぁ、今回の練習は教えてないし。大丈夫だとは思うけど、あなたもうっかり言わないように気をつけてね。」

「わかった、言わないようにするよ。」

今日俺の顔を見た生徒会のメンバーは見知った顔もいくらかおり思っていたより好感的だが、5番は睨みつけの舌打ちである。

だが今、生徒会メンバーは1番の送る言葉を聞いている。

1番も練習の成果が出ていると自覚しているようで、自信を持ってスピーチしている。

生徒会メンバーも今更言うことも無いようで、1番のスピーチを見守っている。

「最高ですよ1番さん!さすが次期会長。練習の必要なんてないのでは?」

5番が1番の練習を見て褒め称えている。

「なぁ、やっぱり今日の練習に‥」

「1番が直接お願いしに来たんでしょう。あの子のお願いを断るの?」

今日の練習に俺は来にくかったが。

朝に1番から「来て欲しい。」と言われ、練習の前にも「私がお願いした。」っと生徒会に説明していた。

助けるはずの俺が守られていた。

「そうだな。もう決めたんだ、最後まで続けよう。」

そう言った俺に2番が笑ってくれた、それだけで良かった。


通しの練習も問題なく終わり、もういい時間という事もあり今日の練習は終了した。

2番は今壇上で1番に立ち位置のついて話をしているようだが恐らく問題ないだろう。

俺は、操作室の備品や鍵を確認して軽い片付けをしていた。

ガチャっ扉が開けられ後ろに振り向くと、5番がいた。

来るのでは?と思っていたが想像通りだった。

「どうした?ここは一人で問題ないから下で待ってていいぞ。」

「なんでお前がいるんだよ?」

まともに返事をする気がないのか、質問に質問で返してきた。

「なんでって言われても、1番が言っていた通りだよ。

朝に練習を付き合ってくれって言われたからやってる、それだけだ。」

「なんでお前なんだよ。放送委員を呼べばいいだろ。」

「知るかよ。それに問題なく出来ただろう、何か不都合でもあったか?」

喧嘩腰で言ってくるが、事実俺にもよくわからないので軽くながす。

だが、それが挑発に聞こえたのか、5番はどんどん目が血走って行く。

「お前が1番さんか2番さんに何か言ったんじゃないのか!?」

「大声出すなよ、狭いんだから。というか俺が何言ったて言うんだよ。」

大きな音が苦手、1番の気持ちがわかるかもしれない。

軽く流して終わらせようと思ったが5番の様子がどこかおかしい。

「正直に言えよ!二人の弱みでも握ってるんじゃないのか!卑怯者!」

「っ!落ち着けよ。仮に俺が何か掴んでるとして、なんで手伝ってるんだよ。」

「ここで2番さんに何してたんだよ‥。」

「はぁ?」

「何してたんだって聞いたんだよ!」

ガチャン!!

拳を近くにあった机に叩きつける。

まずい、卑怯者呼ばわりにムッとしてしまったが、ここで5番に噂でもたてられたら進学の邪魔になる。

それどころか、ここで殴られたりして暴力事件にでもなってもまずい。

ここには防犯カメラも無い、逃げ道も無い。

「な、なんだよ!どうしたんだよ!?落ち着けよ!。」

どうにかなだめようとするが、人のヒステリックを初めて向けられて上手く喋れない。

「お前は!逃げたんだ!生徒会の誘いを断って!だから俺の所に話が来た、俺が生徒会に入って、二人を守ろうとした!でも、お前のせいで二人とも外に出る!お前が奪った!俺の邪魔をするなっー!!」

頭を振り血走った焦点があってない眼球こちらに向けて再度机を殴り今度は拳から血が流れた。

確実に痛いのに構まわず睨みつけてくる。

どうする、あいつの傍を走って逃げるか、でもここは狭い走って逃げるんなら、5番にどうしてもぶつかる。

なんとかなだめるか?いや、もうあいつは正気じゃない。

助けを呼ぶか?でも‥。

どんどん近づいてくる。

喧嘩なんてやったことないのだろう体中に力が入ってガクガクしてるが、この部屋では所かまわず拳を振り回されたら絶対に当たる。

この部屋は長方形で左側に扉がある。

部屋に入るために扉を開けたら壇上が見える大きな窓、その前にボリュームを調整する机のような機械があり後ろに音楽をかけるレコードなどがある。

どうしてもあいつの向こうの扉を通らないと出られない。

「どうして?!‥お前がなんでいるんだよ!」

なんでこんなに激怒してるのか。

そんなにあの二人がいなくなるのがいやなのか、もう俺はここを出るのが決まってるんだからほっといて欲しいだけなのに。

「落ち着いてくれ!俺が何をしたんだよ!そんなに俺の代わりがいやだったのか?

だったらお前も断れば良かっただろ!」

「俺が5番なのは!お前が生徒会に入らなかったからだ!入らなきゃ俺はお前より上に行けたんだ!」

もう、まともに頭が使えないらしい。

「俺も代わりに誘われたんだ。同じじゃないか!」

「うるさい!黙れ!早く消えろよ!」

5番は何かを足元から拾った。

まずい。あれはマイクのケースだ、かなり重量がある。

それの取っ手を両手で持ち、ケースを頭より高く掲げる。

なんとか逃げようと後ずさるがもう逃げ道がない‥!。

「消えろ!!」

ブッワン!

完全に俺にぶつけるつもりでケースを振り下ろすが、力が入り過ぎて俺まで届かないなかった。しかし髪をかすって何本か前髪が持っていかれる。

あ、危ない‥!今、ほんとに‥、。コイツ、本気で‥俺を?

そう考えると目の前が真っ赤になってきた、血が流れてるわけじゃないのに。

力を入れるために5番の腕が後ろに仰け反る。

マズイぞ、頭だけでも腕で守るか?でもあの重量だ‥。腕のどちらかが折れるかもしれない。

折れながらでも逃げるか?でも骨折の痛みに耐えられるか‥!。

「ああ!あああああああああっっ!」

悲鳴のような雄叫びを上げながら5番はケースを、

ガタガタガタっ!!


「何してるの!あなた達!」

5番の後ろから2番の声がする、生徒会のメンバーが5番の雄叫びを聞き何事かと見に来たようだ。

未だにケースを振り上げている5番がが振り向き開いていたドアの2番達を見た。

「あああぁ‥2番さん‥、俺は‥あなたの‥」

ガタン!。

人が集まってきて正気に戻ったのかケースを落とし呆然としている。

その後5番は後ろにいた警備員に捕まりどこかえ連れて行かれた。


「大丈夫だった?本当に怪我ない?」

「大丈夫。助かったよ、ありがとう。」

「ごめんなさい‥。壇上で二人がいるのが見えて‥。何か言い争ってみえたから‥。」

正直危なかったかもしれない、確実にあのままケースを振り落とされていただろう。

あの重さだ、頭に直撃したらどうなっていたか。

横から2番が心配そうに顔を見つめて、1番が前に立って謝ってくる。

それだけでさっきまでの事件が帳消しになりそうだ。

「なんで二人とも4番君をあんなに心配してるの?」「そりゃ、4番を呼んだの1番さんなんだろう。謝るのは普通か?」「でも、ちょっと二人とも近過ぎない?」

生徒会メンバーが色々言ってるが無視しよう。

今ここは生徒会室、さっきまで保健室で色々と検査や警察から質問をされたが解放されていた。

「明日、警察署に行くけど大丈夫?つらくない?」

「大丈夫。ありがとうな一緒に居てくれて。」

警察からの質問でさっきの光景がフラッシュバックして、我ながらショックだったみたいで上手く答えられなかったが、2番が一緒に居てくれて安心して答えられた。

「本当にごめんなさい‥。こんなつもりじゃ‥なかったんです。こんなことになるなんて‥」

1番が必死に謝ってくれる。

「もう大丈夫。それにさっきまで生徒会も警察から聞かれてたんだろ。

そっちは大丈夫だったのか?」

「はい‥。5番くんの今日の様子とか、今日やっていたこととか聞かれました‥。」

1番は生徒会メンバーにダメな所を見せたくなくてやっていたのに、その一員が今まで手伝ってくれた人を襲うなんて思ってもいなかったんだろう。

「ごめんなさい‥。つらいのは4番くんなのに。」

「‥つらいのは、そっちもだろ。式をどうなるんだ?」

「‥わからないの。‥」

俺自身は怪我こそしてないが場合によってはどうなっていたか。

しかももう一か月どころか後、三週間も無い。

出入り禁止になるだろうし、それが解けても学校が同じ場所でやるかどうかわからない。

「式がなくなることはないけど、場所は高等部かもね‥。」

「‥‥」

2番がポツリと呟くが1番も生徒会のメンバーもだんまり。

場所を変えたところでやることは変わらない、変わらないが。

「‥とりあえずもう帰ろう。」

生徒会の一人がそう呟いた。

門限は過ぎているが警察や学校からの連絡で問題ないだろうが、全員気持ちの整理がつかないのかもしれない。

皆それぞれ荷物を持ち生徒会室から出て行く。

「俺の荷物はどうなってんのかな?」

思い返すと俺の荷物は操作に置きっぱなしだった。

「多分まだ講堂か警察が持っていると思います。‥」

1番が答えてくれた。

「そうか、わかった。明日聞いてみるよ。」

「はい‥、また明日‥。」

ガラガラガラガタン。2番はまだいるが1番も生徒会室から出て行った。

はぁ、疲れた。もう帰ろう。

「‥ねぇ、こっちに来て。そこに座って。」

「ん?わかった。」

立っている2番に言われ指示された椅子に座ると、ふわっ。

2番は俺の頭を抱きしめてくれた。

「ん。」

「あんまり驚かないのね。」

そんなわけない、もう気絶しそうだ。

だが、2番の優しい香りがする心の底からリラックス出来る。

「あなたは、大丈夫って言うかもしれないけど謝るわね。ごめんなさい。」

「‥‥」

「元々、あなたを無理やり誘ったのは私で、あそこに留まるように言ったのも私。」

「‥‥」

徐々に抱きしめる力が強くなり2番の心音が聞こえそうになる。

「いつものあなたなら、人前で私にあんなに頼ったりしない。気づいてるかわからないけど、ずっとあなたは‥震えてた。」

そうなのか、わからなかった‥

「1番が謝り続けてたのも生徒会の一人がしたことだけじゃない。あなたが、私から離れようとしなかったから、あなたをすごく心配してたの。」

自分も2番の背中に手を回す。

「あなたはずっと一人で耐えてきた。だから私に頼らないで強くなりたいんだと思う。でも、私はあなたに頼られると安心出来るの。」

「‥‥。」

「あそこは操作室。マイクとスピーカーに電源を入れれば助けだって呼べたはず、

でもあなたはしなかった。自分でどうにか出来ると思ったから?それとも私達が危ないって思った?」

「ごめん‥。」

「私はあなたが怪我をしたり、いなくなったら耐えられないと思う。だから、危ないことを一人でしないで、素直に私に頼って。」

「わかった‥。」

そう言われ、改めて自分の心に気づいた。

震え上がり立つ事も出来なかった。

「怖かった‥。本当に怖かった‥。」

もう、口が止まらない。

「うん、そう怖かったのね。でも大丈夫、ここに私がいるから。」

いつまでそうしていただろうか、時間にして10分位しか経っていないだろう。

でも、この2番と一緒にいる時間は何より救われる気持ちだった。


「‥‥」

「ふふん♪」

すげー恥ずかしい、久しぶりにこの人に弱音を吐いた。

「もう大丈夫なの?もっと甘えてもいいわよ。」

2番が迎えるように両手を広げる。

「‥‥」無言で2番に頭を抱えて貰う。

「よしよし♪」

頭を撫でられちょっとだけ男のプライドが揺れるが、もうさっきまで散々甘えてるんだから今更と、大人しくする。

「ちょっとは落ち着いてみたいね。もう震えてないみたい。」

「もう終わり?‥」

しまったと、思った。

心の声がそのまま出たようだ。

「もっと甘えていいから。」

とても優しい声だが、ちょっとペットに言っているようにも聞こえる。

「‥5番はどうなるんだろうなぁ‥。」

「人の心配?しかも自分を襲った相手の?」

「気になるだろう。最初はあいつ、嫌がってはいたけど声には出さなかったしほんの少しであんなに。」

「そうね、不思議ではあるわね。確かにあなたのこと嫌ってはいたけど、襲撃するなんて度胸あの人にあったように見えなかったわね。」

なでなで。

悪くない。

「頭を撫でられるの嫌いじゃないないみたいね♪。」

さっきからやけにテンション高いな。

「それはそうね。ここ最近放課後とか、休日は練習でなかなか二人きりになる時間なかったでしょ。あなたも甘えてくれてるし。」

ん?今、声に出したか?まぁいいや。

「なぁ、聞いていいか?」

「何かしら?、頭を抱えられたまま。」

「頭はもう少しこのままで、5番ってどうな感じだったんだ?生徒会で。」

「そうね‥。真面目だけどどこか空回りしててプライドが大きかったわね。

あとは‥。この学校をすごく大事に思っていたのかもね。ん?」

「ん?どうした?」

スッと頭を離された、このままって言ったのに。

すると、2番は生徒会室の隅にあったソファーに座り、膝の部分を軽く叩く。

「これは嫌い?」

言われる前に2番の足を枕にする。

「きゃあ♪思ってたより積極的。」

これはいいな。2番の顔が常に見れるのが特にいい。

2番が頭を撫でてくれる、ストッキング越しの足が柔らかくて少し冷たくて気持ちいい。

にしても、1番が飛び抜けて凄かったが、やはり2番もかなりだ、中学生でこれか。

高校になったらどうなるんだ、もう顔の半分近くが見えない。

「うぐっ!」

「ねぇ、今1番の事考えたでしょ?」

鼻をつままれ引っ張られる。

「こんな事してもらってるのに別の人を思い浮かべるんだー。へぇー。」

目の色が変わる、まずい。

「あなたが好きだろうと思ってやってるのにねー。」

「ふぐぅ」

次は頬を掴まれる、さっきより痛い。

「そうよねあんなに大きいもんねー。私も大きい方だけど、大きくければ大きいほどいいんでしょうねー。」

この笑顔はまずい、そしてこれは悪くないと思っている自分もまずい。

空気を変えるために。

「2番?」

「何?ここにいるわよ。」

「ここを出るって決めたのいつ位?」

「んー。そうね、実際はもっと前からだけど周りに言い始めたのはあなたの後だったわね。」

「1番もがっ!」

「なんでそこで1番が出てくるのかしらねー?」

みぞおちに拳が食い込んだ!

それ以上に2番の口が顔に近い!

「必要な事うっ!」

「ふふん、結構驚いた♪?」

思いっきり今2番の吐息を吸い込んで、そして今、またしそうなぐらい顔が近かった。

ダメだ、もう勝てそうにない。

「そうね‥。あなたの後なのは間違いないわね。」

「そうか‥。」いや、大方わかってた事だ。

「きゃあ!急に寝がえり?大胆ね‥!。」

今はとりあえず、この時間を楽しもう。

時間が許す限り。


「どうしよう‥。」

1番は生徒会室のドアの前にいた。

さっきまで自分も混乱していたため、生徒会の鍵をかけ忘れていた。

「4番くんがいたから練習について言おうと思ったのに。」

そこに2番が4番の頭を抱えこんだからびっくりして、そのまま待機(覗き中)である

「4番くんやっぱり2番さんと‥。そうだよね、そうじゃなきゃ私を手伝ってくれないよね。‥」

本当は最初からわかってた事だった、一か月以上ずっと練習に付き合ってくれていたから自分に気があるかと思っていたが。

そして二人の会話も聞こえていて、4番が2番にしばらく泣きついていた。

意識した頃の4番通りの行動だったがこの練習の間は別人かと思うほど強い人だった。

「そうだよね‥。好きな人の前だと正直になれるんだよね‥。」

別に告白した訳でもないのに負けたように感じる。

「私、なんでここにいるんだろう‥。」

さっさと逃げればいいのに、ここから消えればいいのに。

それが出来ないほど、さっきの事件や今の光景に打ちのめされていた。

「もう帰ろう鍵は明日の朝でいいや‥え」

「ん?」

2番と目があった、あってしまった。

「ああぁぁ‥‥っ」

どうしようどうしよう!

2番とは仲のいい友達だった。

その友達が彼氏と一緒にいるところを覗き見ていたんだ、そしてバレた。

もう嫌われたかもしれない、好き人も大切な友人も両方無くしたかもしれない。

「に、逃げなきゃ‥。ん?」

扉から逃げようとしたが2番は1番を無視した。

そして急に2番が4番を離したかと思ったら、ソファーに座り。

「ああぁぁ‥‥、ひざまくら‥。」

その姿は正しく恋人同士であった。

「そんな‥見せつけるみたいに‥。」

だんだん悲しさより悔しさが優ってきた。

「なんで、目があった瞬間やるの?‥そんなに見せつけたいの?でも‥。」

2番の足と自分の足を比べる、2番の足は長く細い。

だけど自分は2番より少し太く見えた。

「そうだよね、足が細くて綺麗な方がいいよね。‥」

コンプレックスが2番と比べることによりどんどん増えていく。

「もう本当に帰ろう‥。」

「ねぇ、今1番の事考えたでしょ?」

「え?」

中で自分の事を話しているようだ。

(何の話だろう?)

耳を澄まし、目を凝らす。

「こんな事してもらってるのに別の人を思い浮かべるんだー。へぇー。」

4番は2番に膝枕をされている、が鼻をつままれている。

「そうよねあんなに大きいもんねー。私も大きい方だけど、大きくければ大きいほどいいんでしょうねー。」

4番は顔を見ていたがでもあれでは2番の顔の半分しか見れないのではないか?

半分顔、もう半分は。

「ぁ‥。」

「あの人はそういう人だから」頭の中で2番の言葉がフラッシュバックする。

自分の武器であり2番と比べて自分が優っているところは‥。

「そうか。ふふっそうだね。まだ早いよね。」

そうだあの人はそういう人なのだろう、気のせいだと思っていたが確かに4番はたまに、見ていた。

1番は自分の武器を確信し、それを教えてくれた友人に心で感謝を伝える。

お礼として今日のことは見てないことにして立ち去る。

「でも、もう少し待ってね‥。私も気分を入れ替えてないといけないから‥」

さっきの事件で傷ついたのは4番だが、4番だけじゃなかった。

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