第27話 頼りになるドワじぃ

 双子のせいで話はややこしくなり、ツバキ親衛隊(ツバキ兄)と俺の親衛隊(双子)で口論まで始まった。


「あーもう!ややこしい!!」


ぎゃぁぎゃぁ騒がれ得るのをみて、めんどくさくなってしまい、思わず叫ぶ。


「だいたいなぁ、俺はそれが嫌だから男として学園に行こうと思ってたんだ。婚約者も作るつもりなかった。これからどうしようって話をツバキとしようと思ってたのに!」


ぜーぜーっと息が苦しい。


「そうじゃのう。これからどうするかなのじゃ。ほれほれ、頭を冷やしなされ」


ど、ドワじぃ…。背景と馴染みすぎてオブジェみたいだったので、今まですっかり忘れていた。


「ヴァイスや、お前さんが伝えたかったのはなんじゃ?自分に待つ運命と自分が男である事じゃろう?」


「あぁ」


コクリと頷いた。そう、沢山の人が来てややこしくなったが、俺はルイ達に女なんだって言いたくて、ツバキには巻き込んでごめんって言いたくて、家族には俺が男装してる理由を話したくて…ただそれだけで。


「それではの。伝えることは伝えたし、運命に巻き込まれたツバキ以外は関係ないのじゃ」


ドワじぃはツバキ以外を「一度解散じゃて、頭を冷やしてくるのじゃ」と言って外に出した。


「ありがとうドワじぃ」


「いいのじゃよ。それより、なぜ弓を覚えようとしてるおるのじゃ?そっちを教えてくれたら許してやるでの」


 なぜって、あれ?なんでだっけ?最初は異世界キタコレだったけど…うーん。あ、そうか!


「家でて、冒険者になろうと思ったから」


「冒険者じゃと?」


「あぁ」


 あの時、家を出ていって、どうやって暮らそうか考えていたとき、冒険者になればいいんじゃないかって思ったんだ。


「でも今はそれだけじゃなくて、レベルが上がったら殺される運命から逃れられる気がして」


 ヒロインちゃんより、レベルがあがったら。ヒロインちゃんより強かったら、もしかしたら、死ななくてすむかもしれない。逃げるだけでなく、立ち向かえるかもしれない。そっか…これからの運命。巻き込んだツバキ。どうしようって思ってたけど…。


「俺が皆を守るよ」


 あの日ツバキを迎えに行ったあの日にした約束をもう一度。俺の心に刻み込んだ。


「はい。と答えたいところですけれど、ヴァイスが女の子とわかったので、私もヴァイスを守ります。だって、お友達でしょう?」


 俺の守る発言にツバキはツバキも俺を守ると答えてくれる。ずっと俺のせいでって思っていた、もしかしたら1%ぐらいは俺の事邪魔って思ってるかもって疑っていた。そんな気持ちはなくなっており、友情っていいなと言う清々しい気持ちだけが残っていた。男女間の友情はないってよく聞くけど、俺とツバキなら大丈夫だな。


「ありがとう!ツバキ!」


「うふふ。それじゃぁ!毎週作戦会議しましょうね!女の子だけで」


「おう!」


「うむうむ。良い話じゃの。戦うなら、武器も防具もおまかせあれじゃ。あ、ヴァイスは冒険者になれぬがの」


 へ?なんだって?なれない?なんでだよ!何回も何回もいい話風になったらすぐ問題がでやがって…。いつになったら締めくくれるんだよ。


「ほっ。決めつけるのは、早いかの。現状無理でも未来はあるかもしれぬでの。まぁ、頑張ることじゃな。あぁそうじゃった、そうじゃった弓できたでの。明日来るのじゃよ?今日来なかったのは許してやるでの。じゃぁの」


「いやあの、くわしく…」


 それだけ言ってドワじぃは俺の話も聞かず帰って行った。謎残して帰らないで欲しいんだけど、本当に頼りになるかならないかわからないじぃさんだな。


 ドワじぃが帰った事により、俺とツバキも一旦解散。明日はドワじぃの所に行くので、明後日に作戦会議をしようと約束をする。覚えてる内容や、今日の事、これからどうするかをまとめてから、話そうと約束して、別れた。


 騒がしかった部屋が、誰もいなくなりシーンと静かで少し寂しくなった。あ、そういえば、シュヴァはいるな。


「今日は大人しかったな?」


 シュヴァを抱え、椅子に座り、膝に乗せる。


「話が難しくてよくわからなかったの。でも、シュヴァはずっとヴァイスのそばにいるからヴァイスが誰でも関係ないの」


 それだけ言い残して、俺の膝で、すやすや眠ってしまった。考えすぎて疲れたんだろう。俺もいろいろあり、疲れた。ずっとそばにいる…か。


窓に目をやると、日が沈み夜になりかかっている。今日は本当に忙しかったなぁと考えているうちに、椅子に座ったまま晩御飯も食べずに眠ってしまった。

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