カリオテの男

PAULA0125

前書き

 これを読むに当たって、この言葉を留意されたい。

 古きの言葉に因りて伝わり曰く、


我が神我が神、なんぞ我を捨て給ふや。何なれば遠く離れて我を救はず。我が歎きのこゑを聞き給はざるか。ああ吾が神われ晝呼ばはれども汝答へ給はず 夜呼ばはれども我平安を得ず。然はあれイスラエルの讃美の中に住給ふ者よ、汝は聖し。我等の列祖は爾に依り頼めり。彼ら依頼みたれば、これを助け給へり。彼ら汝をよびて援を得、汝に依り頼みて恥を負へること無かりき。然はあれどわれは蟲にして人に非ず。世に謗られ民に卑しめらる。全て我を見る者は我を嘲み笑ひ、口唇を反らし首を振りて言ふ。

「彼は主に依り頼めり。主助くべし。」。


当代の言葉に因りて親しまれてはこのように。曰く、


我が神、我が神、どうしてわたしを、お見捨てになったのですか。遠く離れてわたしを御救いにならないのですか。わたしの呻きの言葉にも。我が神。昼、わたしは呼びます。しかし貴方はお答えになりません。夜も、わたしは黙っていられません。けれども、あなたは聖であれ、イスラエルの賛美を住まいとしておられます。わたし達の先祖は、貴方に信頼しました。彼らは貴方に叫び、彼らは助け出されました。彼らはあなたに叫び、彼らは助け出されました。彼らはあなたに信頼し、彼らは恥を見ませんでした。しかし、わたしは虫けらです。人間ではありません。人の謗り、民の蔑みです。わたしを見る者は皆、わたしを嘲ります。彼らは口を尖らせ、頭を振ります。

「主に身を任せよ。彼が助けだしたら良い。彼に救いださせよ。彼のお気に入りなのだから。」

―――詩編二十二章より。

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