第7話

「でもやっぱりそれならわたしのやり方の方が上手くいくと思うの!」

 急に目を輝かせだしたまりのがまた立ち上がった。こんどは京子が見上げる。

「なんでよ」

「だって、京子ちゃんならいまからはじめていって、順番に偉くなっていくしかないじゃない? でもわたしのやり方ならもう出来上がった人をゲット可能だもん!」

 どうだっ、とばかりに指をつきつけた。しかし京子は静かな冷笑を浮かべるだけだった。

「甘いわね、まりの。そんなわけないでしょ。

 あなたみたいなね、かわいいだけの女を選ぶような男は、中途半端にしか出世しないのよ!」

 びしぃ、と逆に指をつきつけ返された。その勢いに思わずのけぞる。

「そ、そんなことないもん。か、かわいい奥さんのために頑張るダーリンを見つければいいんだもん!」

「そんなことあるわよ! いい、本当に偉くなって世に鳴り響くような男はね、自分と一緒に頑張ってくれる忍耐力のある人を選ぶのよ! いい時も悪い時もあるのが人生。それなのにいいとこだけしか知りたくないような、後ろ盾もないのに勉強しないでかわいければなんとかなるなんて思ってる子、足手まといにしかならないでしょ!」

「うぅっ……!」

 自分でも自覚したくなかった正論を言われて、言葉につまってしまった。はながうなづく。

「そうかもしれないね。うちだってお母さんがお父さん手伝ってるの当たり前だもん」

「は、はなちゃんちは八百屋だからわたしのターゲットとは違うの!」

「でも一応、お父さんは社長だよ」

 ちっちゃいけど、とかりんとうをかじりながら言った。しかしもまりのはそれに衝撃を受ける。

「そ、そうだった……はなちゃんのお父さんも社長さんになるんだったね……」

「どう、見たかしら。まりののやってるようなことをしたって、ちっちゃな会社の社長さんにも見向きされないのよ!」

 京子は立ち上がりまりのへと指をつきつけた。耐えかねたまりのは膝から崩れ落ち、たたみにへたり込んでしまった。その振動でちゃぶ台がゆれる。

「じゃ、じゃあわたしはどうしたらいいの……」

「勉強しましょう」

 そういって肩へと手を置くのだった。

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