24.リルリルの甘いお仕置き

 ウェルガーが、ベッドの上でリルリルに主導権を握られるのは初めてだった。

 なぜなら、それは食べ物を粗末した甘いお仕置きだったからだ。


 リルリルは「今日は、動いちゃダメです。私がアナタを苛めちゃいます♥」といって夫の身体を弄りまわしていた。


「あぅぅぅッ! ああ、そこはぁぁぁ――」


 ウェルガーは一〇歳の幼妻エルフに責められ声を上げていた。


(俺の弱点…… どこで知った?)


 ウェルガーは思う――

 脳裏に浮かぶ、その元凶。

 彼女たちを護衛して家にやってきた黒髪の悪夢・サイコ・悪鬼・鬼畜――

 つまり、彼の師匠であるニュゥリーンだ。

 師匠がリルリルに何かを吹きこんだのかも知れない――


 悪人三人の取り調べは、あの後も続き、彼らの船も調べた。

 結果――

 船内で信じられないモノをウェルガーは目にしていたのだった。

 そして、別室で寝ているはずの褐色エルフ娘のラシャーラがエルフの王国の王女だった。


 本人にもそのことは確認済みだった。それは本当だった。

 夜も遅かったので、詳しい話は後日ということになったが――  

 とにかく、大変な一日だった。


(どうにも…… 嫌な予感しかしない――)


 晩御飯を食べ、お風呂でリルリル成分を十分に吸収した。

 そして、ベッドの上で幼妻に「甘美なお仕置き」を受けている最中でもその懸念が消えない。


「もう♥ その顔はまだ反省してないです! カプッ」


 再び幼くピンク色をした唇が彼の胸に触れていた。

 ウェルガーの弱点である乳首をキュッと強く噛まれたのだ。

 高い体温を持った幼い舌がクリクリと動いているのを感じる。


(あ、ア、ア、ア、ア、ア―― リルルルゥゥゥゥ♥ 可愛すぎだよぉぉ♥ くそぉぉ! 子作りしてぇぇぇ!)


 チュッと音をたて、リルリルの唇が胸を離れる。

 彼女は乱れた長い髪をかき分ける。

 灯明皿の薄明かりが、闇に溶けかかったその金色を浮き上がらせていた。


「もう、なにか考え事していたでしょ? 今はダメなのぉ♥(もう♥ アナタの気持ちよくなっている声も好き♥、好き♥、大好きぃぃ♥)」


 無理して作ったきつい声音とは裏腹に、エルフ特有の長い耳はパタパタと振られていた。

 耳の動きで分かる感情を抑えることが出来ない。


 エルフも大人になっていくと感情を外にダダ漏れにしない術を覚える。

 しかし一〇歳で憧れの人の新妻となったリルリルには、まだそれができない。

 ただ、ダダ漏れの感情を指摘しないだけの分別が、年上の夫にはあった。


(もう♥ 心配なのぉぉ―― ウェルガーが強くても心配なのぉ♥ あああ、赤ちゃんが欲しいよぉぉ♥、ウェルガーの赤ちゃんが欲しいのぉぉ♥ この人の赤ちゃんが欲しいのぉぉ♥)


 リルリルは最愛の夫との間に早く赤ちゃんが欲しかった。

 それはふたりの愛や絆を「形」にするものだった――

 赤ちゃんを作ることで、早く大人になりたいのだ――

 リルリルは、それで初めて対等な夫婦に成れるような気がしていた。

 

(ウェルガーは大好きだけど、どこか、私を子ども扱いするし―― もう…… こんなに子作りしているのに…… なんで出来ないんだろう?)


 リルルルはウェルガーに#跨__また__#がり、白い肌の美麗な顔を彼の顔に近づける。


(リルリル―― ああ、近くで見ると。超可愛いよぉぉぉ―― くそぉぉぉ。灯明皿を増やしてぇぇぇ)


 灯明皿の薄明りも煽情的でロマンティックな雰囲気を演出してはいるが、もう少し明るい方がいいとウェルガーは思った。

 とにかく、リルリルをよく見たいのだ。


 リルリルの不思議なほどに柔らかく、温かい唇がウェルガーの唇に重なった。


(あ、あ、あ…… もう、お仕置きなのにぃぃ――)


 リルリルの可愛い前歯をこじ開け、夫の大きな舌がヌルリと口の中に入って来る。一瞬で、頭の芯が痺れるほどの気持ちよくなる。

 彼女は、その舌に自分の舌を絡ませることも覚えた。まるで「もう、子どもじゃない」と言っているかのような動きで絡みつく。

 

 ちなみに、彼女はそういった一連のことが、「子作り」だと思っている。

 キスをして、肌を合わせ、ベッドの上でイチャイチャしていると「愛が子どもを授けてくれる」というのが、彼女の性知識のレベルだった。


「もう、気持ち良くなっっちゃぅぅ♥~ これはお仕置きなのにぃぃ♥~」


 キスとすると、お腹の奥が熱くなり、頭の中が痺れて真っ白になりそうになる。

 それは、赤ちゃんが出来る前兆ではないかとリルリルは思っていた。


(あ…… アナタも気持ちいいんだ…… でも、お仕置きだし……)


 薄明かりの中、されるがままになっているウェルガーもだんだんたまらなくなってきた。

 身体にその変化があらわれてくる。

 

(そうだ! リルリルとのイチャイチャラブ―― それが俺にとって最大の使命―― 今はそれに集中する。溺れる。没頭する。耽溺するのだ!!)


 これから先の不安なことは、明日考えればいい。

 今は最愛の幼妻をいっぱい愛することが、彼にとって最重要事項であることを心の中に叩きこむ。

 でもって、全ての不安からは「俺が絶対にリルリルを守る」ということでいいと彼は思った。


 手の動きを禁じられているのがもどかしい。ここで、彼女をグッと抱きしめたかった。


「あああ―― ごめん。リルリル。せっかく作ってくれたパンをあんなふうに使って」


 お昼のお弁当に用意された二〇枚のパン。

 異常ともいえる硬さをもった円盤状のパンである。

 

「食べ物を、武器とかおもちゃみたいにしちゃダメです! もう―― お仕置きなのに…… 気持ちよくなってるでしょ?」

「だって、リルリルが可愛いすぎるんだよぉぉ。可愛い! 超可愛い! もうぉぉぉ、ああああ――」

「ダメ! 今日は手を使ったら、ダメななのぉ」

 

 そう言ってリルリルは自分の胸の方に伸びてきた夫の手を止めた。


(私だって、ギュッとして欲しいし、触って欲しいけど、今日はお仕置きだもん♥)


 そして、夫が触れようとしていた、フラットな胸をペタッと彼の胸にくっつけ、こするように動いた。

 リルリルのサクランボのような唇から吐かれる呼気が荒くなってきている。


(おおおおおお―― お仕置きも悪くねェぇぇぇ!! この柔らかいボディと肌の感触…… いったい何で出来てるんだ? あ、あ、あ、あ、あ♥)


「あ、勝手に気持ちよくなってるでしょ♥」

「だって…… リルリルにそんなことされたら……」

「もう、お仕置きだっていうのに、ダメなのぉ♥」


 リルリルは後ろを振り向き、それを見つめていた。

 ウェルガーが気持ちよくなってリルリルを愛している感情が高まると大きくなる器官――

 愛情を隠すことができない、エルフの耳のようなものだと彼女は夫に教えられていた。


 ウェルガーの股間から立ち上がっているものだ。

 本来の「赤ちゃんを作るための」の使い方はまだしていない。未使用品である。


「リルリルを大好きな気持ちが溜まっていくよぉぉぉ、あああああ―― 大好き、大好き、大好き! リルリル! その瞳も耳も、口も、鼻も、スベスベの身体も、黄金色の髪の毛も―― 全てが愛おしいんだぁぁぁ」


「もう―― 今日はお仕置きだから少し我慢しなさい♥」

 

 リルリルは厳しい口調で言った。本心は分からない。

 いつもであれば、その嫋やかな指で固まってドロドロになってしまった愛情を出してあげるのだ。

 彼女は夫から「人間の男は愛情が濃すぎて、固まってドロドロになって溜まって苦しくなってしまうんだ」と説明されていた。

 で、それを吐き出さないと、すごく体に悪いらしいのだ。


 彼女はウェルガーにそう教わっていた。 

 ウェルガーは、リルリルを愛していたが、子どもを作るのは早すぎるし、そもそも生物学的に無理なことを知っている。

 彼女は女性として未完成だった。端的にいって「来ていない」のだ。まだ、赤ちゃんを作れる体になるのはこれからだ。


 ウェルガーは「来たら、きちんと説明してあげよう。子作りはそれからだよなぁ~」と、今はベッドの上でイチャイチャラブラブな行為だけをしているのだった。


 一〇歳エルフの幼妻と肌を合わせるだけでも、ウェルガーにとっては極楽以上のものだった。

 そして、それを重ねるたびに「絶対にリルリルを幸せにする」という思いも強くなる。


 リルリルは薄明かりの中、ウェルガーの股間をみやった。

 自分への愛情でパンパンにそそり立っている人間の男の器官が薄っすらと見える。

 闇が細部を隠しているのは、お互いにとって幸いだったかもしれない。


(もう…… 人間の男の人って、変なの…… でも、なんか可愛い――)


 リルリルはそれをいつも通り触ってあげたくなる。

 しかし、途中で手を止めた。


(あんなに大きいモノの中身が全部「私を大好き、私を超愛してる」ってウェルガーの想いなんだ……)


 彼女は一〇歳らしい好奇心で「叩いたらどうなるんだろう?」と思った。

 それが凄く硬く、自分が叩いたくらいでびくともしないことは知っている。

 お仕置きであるので、いつものように触れない。

 であれば、叩いてみようかと思ったのだ。


「もう、お仕置きです! えいッ♥」


 真っ白で小さく可愛らしい手のひらが、パーンと夫の大事な部分を叩いた。

 夫というか夫婦が子作りをするために大事な部分だ。


「あうぅぅぅ――!! あ゛、あ゛、あ゛、あ゛、ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛~」

 

 そのたった一発で、ウェルガーはリルリルへの「愛の流動体」を空間に噴き出したのだった。


「あ、こうすれば、簡単に出せるんだ♥」


 夫の身体の新しい秘密を発見して、リルリルはなぜかドキドキした。

 

「リルリルゥゥゥ~ 凄すぎるよぉぉぉ~ 可愛いよぉぉぉ、超超愛しているぅぅぅ~♥」


 ウェルガーは荒い呼気を繰り返しながら、蕩けるような声で言ったのだった。

 そこには、元勇者の凛々しささなど微塵もない。

 しかし、そんなウェルガーもリルリルは大好きだった。


 リルリルはクルリと反転し、ウェルガーに真っ白な背中を見せていた。


(まだ、「私のことが超大好きな気持ち」がいっぱいなんだ…… アナタ――)


 愛の塊の流動体を吐きだている、夫のそれをジッと見ている。

 それが凄く愛おしく、可愛く思えてくる。

 人間の男の人は「愛の塊」を吐き出すと頭が真っ白になるほど分けわからなくなるらしい。

 それは、元勇者の夫も同じだった。


 感情が耳の動きに出てしまう、エルフと同じようなモノかと思っている

 今も、リルリルの耳はパタパタしていた。


「もう、まだこんなに、好き好きなの? そんなに私が好きなの? ウェルガー」


「あ、あ、あ~ 大好きぃぃ、もう、超絶的にしゅきすぎてぇ…… 頭真っ白になるくらい、好きぃ、愛している。マジで超愛してるんだよぉ、リルリルゥゥゥ あ、あ、あ、あ――」


 今までにない幼妻からの強烈な一撃は、ウェルガーの脳神経を焼き切れそうしていた。

 快感報酬系の脳内シナプスが強烈なパルスを放って、暴走を開始したかのようだった。


 愛情物質が間をおかずに、パンパンになってくる。いくらでも愛が無限に生成されそうだった。

 穴という穴から、リルリルへの愛がダダ漏れになりそうな感覚だ。

 

「もう、大好きなのぉぉ、私も大好きぃぃ、ああああ、らめぇぇ、そこはやだぁぁぁ~」


 禁止していたはずのウェルガーの腕が伸びてきた。そして肌に触れた。そしてもっと――

 

 リルリルの甘いお仕置きは中断された。

 また、ふたりは、いつもの新婚いちゃラブに状態になっていく。


 甘い匂いのするリルリルの喘ぎ声が、部屋に響く。同居人がいることなど、もはや頭の中には無い。


 ふたりのいちゃラブは、朝方まで続いたのだった。

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