「ショッピングモールの人食いウサギ」

「やっべ。」


「うん、マジやべえ。」


冷や汗をかきながら、

僕とやっちんは2階の洋服売り場から

下を覗き込む。


廃墟のショッピングモール。


過疎化で人を呼ぶために作ったのに、

結局、潰れちゃった崩れかけの建物。


売り物は全然ないけれど、

マネキンとか壊れた時計とかそのままの場所。


上にあったガラスが割れてて、

中に巣でも作っているのか、

鳥のフンが所々に落ちている。


その一階の枯れた噴水の側で、

一回りもふた回りも大きなウサギの着ぐるみが

手近につかんだ人をモギュモギュと食べているのが見える。


…そう、あれは人を食べている。


「あ…が…、あぐ…」


食べられているのは

どこにでもいるようなサラリーマンのおっさんで、

体が圧迫されているのか顔が青紫色になっていて、

今にも目玉が飛び出しそうになっている。


よく見れば、まわりにはウサギの食べ残しか、

大人もののハンドバッグや服や靴や書類が散らばっている。


「『大食いウサギ、悪食でなんでも食べる。

  とっても高いジャンプができる。

  つかまらないよう気をつけよう!』…だって。」


そう言って、スマートフォンの

説明を読み上げるのはクラスメートのユウリで、

彼女は「うーん」とうなった後、僕らを見る。


「で、どうすんのよ。あんな化け物。

 本当に人を食べてるじゃない。」


それに僕らも「うーん」とうなった。


スタンプ集めの初参戦。

僕らは早くも壁にぶつかっていた。

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