第5話フェノメン



勇者の頭上の空は薄暗くなり、ひび割れていた。皹の間からは更に濃紺の光が大陸に照射されていた。


天壊。


空が割れ、異世界から多数の魑魅魍魎が進入し、怪物を含む死者が生きる屍となって蘇ってくる現象である。

10年に一度起こるこのフェノメンに勇者のいる世界では多くの民が悩まされていた。


殺しても、殺してもキリが無い。


私は何故、モンスターを倒しているんだ。


勇者は時々理由を見失いがちになる。


だがそのフェノメンよりも熱い闘志が勇者の心を荒ぶらせていた。


天壊が起こると日光が遮断され、作物の生育にも被害が起こっていた。


そして今、砂漠の真ん中、勇者の眼前には、かつて自らが倒した魍魎達が群れをなして襲いかからんと息巻いていた。


別に構わない。


勇者はそう考えていた。


何度蘇ろうが、何度でも倒してやる。


たとえそれが魔王であったとしても。


何度でも、何度でも。

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