第14話~キャパオーバー

 新入社員が全セクションに入る。


 インフォには、男に媚を売るブリっ子が入ってきた。I坂Y里。私と同じ歳。おそらく元々目が大きいにもかかわらず、アイプチを使ってさらに大きくしていた。化粧は濃い。男受けの良い、体のラインがぴったりむっちりした服装。誰にでも良い顔してたな。男はバカだとつくづく思った。彼女は何人もの男を手の上で転がす。近辺の飲食店の男にも手を付ける。彼女には、女性社員からは白い目で見られている自覚があった。図太い女だった。




 そんな中、良くしてくれる理解ある優しい先輩も何人もいた。本当によくしてくれた。優しかった。私の愚痴もどんな話も、すればきっと聞いてくれただろう。少しでも愚痴っていたら、何か変わってたのかな。私には愚痴る機能がなかった。何か先輩に話そうとしても、「いや、これは自分の問題だから、自分で解決するしかない」と躊躇し、そして抱え込んだ。何も言えなかった。




 セクション異動の希望をしていたら、どうなっていたかな。何か変わってただろうか。何かを考える、何か行動を起こす。そんな余裕なんて微塵もなかった。




 いつまで経っても慣れない仕事、会社。少しも好きになれない。やりがい云々の話ではない。毎日帰りの電車では、世界の終わる顔をしていた。




 私は契約社員。1年が過ぎ、契約の話になった。全てにおいてキャパオーバーしている私の頭は何も考えられなかった。流されるまま、契約更新に印を押した。

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