第拾陸話―オーガの地へ―

わたしはエルフとして生まれ育った。エルフは神聖で高位種族であることに他の種族を見下していた。特にドワーフやダークエルフに対しては。


そんな、わたしはエルフの森で魔物に襲われているところを有馬颯牙に助けられた。


それが運命的な出会いと心をときめいた。それからチート能力を使う者だと知ったときは驚いた本当に・・・確かエルフの偉い人達が、

転生者の子供を作るようにとよく言われた事を思い出す。わたしはエルフの使命と意気揚々いきようようなっていた。


「うわぁ!?エレナ急に

どうしたんだ」


「えへへ、何でもない」


思いきって腕を抱き貧弱ひんじゃくな胸を密着という大胆な事をした。


ここまで好意を向けているのに有馬颯牙は一切、手を出さない。転生者の多くが潔癖けっぺきであると噂があったけど事実、またはコンプレックスの幼い容姿がダメなのか不安にもなった。


次も色仕掛けみたいな事をすれば顔を赤くなって、そんな反応され心臓が速くなるのを感じた。


徐々に好きになっていき昨日よりも今日の方が好きになっていき嗚呼ああこれが本当の恋愛だと実体験で理解した。


「ソウガ?」


暗闇の世界。そう何もない黒で塗り潰された世界で愛する人が

目の前にいた。


「もしかして天国?わたし仇を取れなかった・・・でも、こうして

会えてすごく嬉しいよ」


ソウガは、ニコッと笑う。

それだけで、すべての苦しみが解放された気持ちになる。

手を伸ばす。


「ソウ・・・・・ガ?」


後ろへ向き歩く。


「ま、待って!!」


走る。けど距離が一向に縮まらないどころか遠くなっていく。


「どうして!?お願い待って、わたしを置いてけぼりしないでソウガ!!」


イヤだ。ソウガから見えなくなれば2度とと会えない。


「ソウガ・・・ソウガァァァ!!」


星のような小さくなり、針よりも小さくなり、見えなくなる。


「一人にしないで。ソウガいつものように、わたしを助けてよ。

怖いよ、離れたくないよ、ずっと会えなくてもいいから、どこかで元気でいてよ」


支離滅裂になっていく。けど、これはすべてわたしの想い。

愛する人がいないのは世界が壊れるのと変わらない。


せめて、どこかで生きてくれたら嬉しい。それが2度とと会えないことだとしても。けど、一番は会いたい。ただ、それだけの渇望かつぼうさえも闇に燃えて消滅した。


「わあっぁぁぁぁーーーー!!!」


闇の世界で泣き叫ぶ。音がなく、自分の姿しか色がない。


「しっか・・・くれ」


「その声・・・・・ガイアなの?」


「かい・くが・・てるどうか」


「この声、知らないけどマリヤの仇に同行した騎士の一人なの?」


「クソッ、・・・・に何と報告すれば」


「この声はマリヤの騎士で間違いない。わたしは、ここにいるよ。誰か来てください!」


返事は帰ってこない。もしかして幻聴になるのかな。諦めようと考えると暗闇から亀裂が走る。


「まぶしい、光が!」


亀裂が世界に生じるとバリンと割れ世界が光に包まれた――


「・・・うっ、」


木にもたれて座っていた、わたしは目をゆっくりと開くとローブを着た知らない大人の女性がいた。


「目覚めましたね。よかった」


胸をなで下ろし安堵していた。

その言動でわたしは治療してくれたのだと遅れて気づく。


「ありがとう治癒ちゆの魔法使いさん」


「いえ、私なんかがお役に立てて光栄です」


わたしはお姫様じゃないのにかしこまった言葉しなくてもいいのに。苦笑していると、腹部が痛みが走って抑える。


「まだ、完治するほど回復させていませんので無理はしないでください」


「はい。助けてくれてありがとう」


微笑を浮かべる治癒の魔法使いにわたしも微笑み返す。


「エレナ!目覚めたんだね」


「ガイア・・・達も平気だったのは、不適切だった。どれぐらい犠牲ぎせいが出てしまった」


見上げるとガイアとマリヤの

精鋭騎士。

懸命に戦って敗北したのは悔しいが気になるのは犠牲者。愛する人を奪った私怨を巻き込んだ騎士に

は戦死していないことを祈るけど激しい戦いでゼロはありえない。


「犠牲者は一人も出ていないよ」


「えっ?一人もなの」


「ああ、まさしく奇跡だね。

命あっての物種だよ」


ガイアは奇跡と言ったけど、それは奪わなかったことじゃ。

おそらくガイアは薄々と感じているけど、わたしには気を遣っているかもしれない。


「うん、分かった・・・」


なら、どうしてソウガやマリヤを殺したのか謎が深まっていく。


復讐を燃やすエレナが、疑念を抱かせたガロンは・・・種族オーガの領地に入っていた。


「ガ、ガロンさん。ここ恐い魔物がたくさんいます!」


「道中で熊や猿が出てきたが、もっと厄介やっかいな存在がいるから大声を決して出すなよ」


「キヤッアァァァーー!?

お猿さんが、きのみを投げてきました。痛いです心も」


物を投げられ当たると地味に痛い上に非難されているようで悲しくなる内ケ島は、木の枝にいる

マウンテンモンキーに怯えっていた。数時間前にエレナ一行と戦闘していた緊張感はすっかり緩んでいた。


「またか・・・ふんっ」


ガロンは毒矢でマウンテンモンキーを5メートル以上の枝から地面に倒れ動けなくさせた。


「よし、落ちた猿に杖で叩き潰してレベルのかてにしろ」


「む、むむ、無理です!!」


「・・・1回目は見逃したが、

叫ぶなバカ」


「す、すいませんガロンさん」


ガロンと内ケ島が、オーガ領土の森林を歩いていた。内ケ島したら


(ずっと森の中に歩いているよ。

ガロンさんって森が好きなのかな?)


ただ、襲撃しやすいのと発見されにくいメリットで選んでいるだけだったが。今回はエレナ達を倒して援軍が現れる可能性とウール村に戻ればかくまった事に糾弾され

燃やすだろうと考慮した。


「なら、この槍を使え。

これなら苦しまずに、すぐに絶命させられる」


二槍の一つを前へ差し出す。

ガロンは内ケ島のレベルアップを勧めるメリットは無かったが

性根としか言えない性質的なもの。


「で、でも・・・」


「俺が息の根を止めても黙って見ている、おまえもしているのと変わらないことだ」


「・・・・・はい。恐いけど、やってみます」


槍を受け取り内ケ島椛葉は動けなくなる猿型の魔物に突こうと構えるが、それ以上の前へ動かせなくなる。初めてじゃないが抵抗は強い。


「ハァ、ハァ・・・」


自分の選択で一つの命を奪うことに手が震え始め、呼吸が苦しくなる。ガロンは嘆息して、そして内ケ島が握る柄から下の部位である石突いしつきを握り、魔物を突き刺す。


「ぎっきゃああぁぁぁーー!!」


甲高い断末魔だんまつまを上げる。その声がやむと生命活動の終わりを意味した。ガロンが押したこととはいえ背筋がゾッとなる生々しい感触だった。


「あっ・・・・・」


「勘違いするな。おまえがやったんじゃない。俺がトドメを刺した」


「ガロンさん?それって、わたしを気遣って・・・いえ、なんでもありません」


無限実行むげんじっこうするガロンをどう理由かなんて訊くのは失礼と思い内ケ島の言葉をこれ以上は言わないことにした。


最後まで言うと「利用しただけだ」と捨てるような言葉を発していた。


「槍が必要になったら遠慮なくいつでも言え。貸してやる」


「あっ、はい!槍を返します」


両手で槍を渡そうと前に出し、ガロンは受け取り背中へ戻してオーガの地で今後の事を考察して歩く。

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