婚約破棄は、ご褒美です!

空のかけら

本文

「真実の愛に目覚めた。男爵令嬢と婚約する!」


王太子がそう、宣言する。


「公爵令嬢が男爵令嬢に嫌がらせをしていたことは知っている。恥を知れ!」


そう、王太子は言うが、かなり違うと思う。


「私はそんなことはしていません。男爵令嬢が望むことをしていただけです」


それに激怒する王太子。


「床を掃除して汚れた水を男爵令嬢に投げることも、階段で突き落とすことも望んだことだと言うのか!」


「ええ、彼女は“そういうこと”に興奮するそうですから。根っからのM体質なんでしょうね」


その事…M体質が王太子には、分からなかったのか


「何を言っている?嫌がらせに決まっている。訳の分からないことは言うな。


しかし…


「公爵令嬢さま!ありがとうございます。私の体質に気がついて頂き、感無量です」


なぜか、男爵令嬢から感謝の言葉が…


王太子の隣にいたはずの男爵令嬢は公爵令嬢に駆け寄ると、そう感謝の言葉を言う。


「違う身分のもの。しかも上の身分の者に話しかける場合は、許可を得てから話すなんて基礎を知らないのね」


そう言うと、頬を平手打ち。


パーン


その行為も問題なのだが…


「ご褒美です!」


「は?」


男爵令嬢の言葉が分からなかった王太子。


「本当に救いがないわね」


救いがないのは、誰なのか。


「あなた、私の家に来なさい。基礎から鍛え直してあげる」


「はい!毎日叱ってもらえるなんて、夢のよう」


王太子は、事の次第を見ていたが、はっ!と気がつく。


「男爵令嬢。私との愛に目覚めたのではなかったのか」


「はい!あなたと行動することで、公爵令嬢からのご褒美をもらえました。これで、互いに愛しているなんてなったら、どんなご褒美がもらえるか。震えました。でも、二人っきりだったらと想像しちゃいました」


「何を言っている?」


「公爵令嬢さまからお誘いを受けましたので、王太子さまとの交際も終わりです」


「な…」


信じられないという顔をする王太子。


「いくわよ」


「はい!」


公爵令嬢は平静のように見えるが…


「あら珍しい、ご機嫌ね。すごく嬉しそう」


「そうね。狙っていた娘を手に入れることに成功したからかしら」


「公爵令嬢の男爵令嬢好きは、有名だものね。知らないのは、男子と当人たちかもね」


こんな事をささやくクラスメート。


舞台から公爵令嬢と男爵令嬢が去って行く。


取り残された王太子。


哀れである。


これは、ハッピーエンドで終わった公爵令嬢と男爵令嬢のお話。


話について行けないのは、王太子。


「真実の愛。そうか、相手をいじめれば見つかるのか」


なんだか、意味不明な方向に曲がってしまった彼は、本当の愛に気がつくのだろうか?

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