第3話 S級ストーカー

研究室に戻ってリストにあった解熱剤を作っていたら中庭で遊んでいたザザとララが研究室に駆け戻って来た。


研究室に戻る途中でララは幼女から子犬に戻った。マルセルと一緒に調べてみたら、フェンリル族は子供のうちは人化が難しいらしい。あのS級ロリコン野郎の強制力が切れたのだろう。


ザザがいつも以上にララを構う。母のように世話を焼いてきたザザにとって、ララは可愛い娘だ。甘ったれなララは大喜びでザザにじゃれている。


作業がひと段落した時、2匹の可愛い姿で癒されようと顔を上げて後悔した。S級ロリコン野郎が窓に張り付いていたのだ。


「うわああ! マルセル! マルセルー!」

思わず叫んでしまった。



「全ギルドは中庭で繋がっていて…」

目の前で恐縮しているのは冒険者ギルドの小次郎ギルマス。その横で正座しているのはS級ロリコン野郎。頭には大きなタンコブ。ザマアだ。


冒険者ギルド、商業ギルドなど、この街にあるギルドは一か所に固まっており、広い中庭を共有している。


「うちのララへの接近禁止命令措置を申請する」

「そんな!」

S級ロリコン野郎が何か言いたそうだが、どんな言い分も受け入れられない。


「うちのララへの侮辱に謝罪もなくストーカー行為。それも、いい大人が幼女のツガイになりたいという変態的な理由でストーカー行為。

 これほどの変態を見るのは初めてです。いますぐ去勢するか地下牢に監禁するかしてもらわないと困ります」


ザザが歯を剥き出しにして唸っている。ザザの両前足の間に挟まれたララもS級ロリコン変態野郎を睨んでいる。


「この通りララはS級ロリコン変態野郎を嫌っていますし」

「嫌っているというか…本能でヤバいと感じてるっぽいよね。小次郎ギルマス、ロリコン死すべし慈悲はないですよ」


「申し訳ない…。ロボ、お前は中庭に侵入禁止だ!」

「そんな!」

「ワイハ島の火山で調査依頼があったな…」

「まさか…」

「行って来い。明日の出発でいいぞ」

きゅう過ぎ!」

「今日から行きたいか?」

「………明日からで…」


ギルドメンバーは自由業ではない。ギルドという組織に所属する職員なので転勤や依頼を断ることはできない。


小次郎ギルマスがS級ロリコン変態野郎を引きずって帰っていった。


「しばらくは静かになりますね…」

「その後のことは薬剤師ギルドのギルマスが戻ったら相談したい」

「はい…」


ザザとララを気に入っているマルセルが残念そうだ。話し合いによってはハヤトはトキオに戻るつもりだ。


「今から作れる薬も無いですし、今日は終わりにしましょう。ミシマクロケットのお店に案内しますよ」


マルセルの案内でコロッケ屋の行列に並んでいたら視線を感じる…見回してみると……いた。巨大な白い犬っぽい獣が建物の影からこちらを見ていた。


「もしもし? ポリスメンと小次郎ギルマス?」

マルセルが通報した。気が利くな。


警察の聴取の後、S級ロリコン変態野郎は小次郎ギルマスに引きずられていった。フェンリルの嗅覚を悪用して匂いで家を辿る可能性があるので、明日の出発まで地下牢に入れてくれるらしい。


とりあえず各種SNSに被害状況をアップして寝た。イズ地方で暮らす幼女と、その家族への注意喚起だ。

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