気がつけばそこは出口のない迷宮。貴方が居るのは『どの世界』ですか?

『並行世界』を垣間見たことがある人は、実はいくらでもいるのではないでしょうか。
多くの人が、その事を認識するきっかけが無かったり、気のせいだと視なかったことにしたりするだけで。
視たいものを視て、信じたいものを信じる。
人がこのような傾向にあることは、皆薄々気付いているでしょう。

こちらの作品に足を踏み入れた時、『知っているけれど知らない世界』に来てしまった様な不安を覚えます。しかし暫く過ごす内に、その世界の風景に慣れたり、そこに居る人達を知ることで、自分もその世界の一員になったように錯覚する。
まさに、この作中の人達のように。

世界の構造が見えだす頃、そこが改めて迷宮のように見えて、『タイトル』を二度見することもあるでしょう。
読者の立場としても、『まさか自分のいる世界も、この世界の一部ではないだろうね?』とそういう気持ちになってしまいます。

作中の情景描写や心理描写は、その時々や場合によって、『写真的』であったり『印象的』であったり、素晴らしく巧みに表現されており、いつの間にかその世界に引き込まれてしまいます。

キャッチコピーにある『なくしたもの』は、行方不明になった人のことではありますが、読み解く内にそれを基点とした広がりがあることに気付いてハッとします。

よく解らない物事って、ちょっと怖いでしょう?
だから人は、恐怖を拭う為に知ろうとするんです。
知らないままでいいですか?
ここにはそんな心に寄り添って『出口』を見つける手伝いをしてくれる人達がいます。
『なくしたもの』なんて無いつもりでいる貴方も、良かったら会いに行ってみませんか?

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