第34話 夜の番


「結局は勇者なわけよ」


「それが今日の話題ですか」


「魔王を退治するために命を張る。それは俺等も同じなんだけどな」


「確かに称賛を浴びるのは勇者ですが、貴方も国へ帰れば安定した将来が待っているのでは?」


「いや、女関係の話」


「ああ……」


「露骨に興味失くすなよ」


「実際、あまり興味が」


「どうして?」


「私には婚約者が居りますので」


「そして勇者に奪われるわけだな」


「その時は私が勇者を討伐するだけですね」


「真顔で言う分、マジさがパねえ」


「他人の女性に手を出す男なぞに遠慮は不要でしょう」


「でも女性から向こうに行ったら、どうするよ」


「そのような女性ではありませんよ。と、言うには確かに人は脆い」


「お、その意見はちょっと意外だな」


「人が弱いからこそ私たちは女神様に祈るのですよ」


「信じる心がどうのこうの言うかと」


「信じるだけですべてが救われるというのであれば、世界に悲劇は起こりませんよ」


「結局は行動しなきゃいけないわけだ」


「そういうことです。さて、皆さんを起こしてきますかね」


「頼むわ。……はァ、偶には襲撃のない夜を過ごしたいもんだな」


「全ては行動あるのみですね」


「笑えねえ」

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