第20話 バイトの更衣室


「犬上さんって、あれっすよね」


「何」


「イブもクリスマスもシフト入れてんすね」


「ああ。まあな、それが何」


「彼女とか居ないんすか」


「居たらどっちか開けてる。と言いたいけど。最近じゃ、あんまりイベント事に力を入れないカップルだって居るだろ普通に」


「え。じゃあ彼女居るんすか」


「居ないよ」


「じゃあ今の内容なんだったんすか……」


「お前のニヤニヤ顔がむかついたから」


「犬上さんって本当あれっすよね。怒ったところ見たことないっすけど、口は結構悪いっすよね」


「先輩相手に生意気言ってくる後輩にこの程度なら可愛いもんだろ」


「それもそうっすけど。で、で!」


「何」


「嫌だなァ! ちゃんと聞いたんすから俺にも振ってくださいよ! 彼女居るのかって!」


「お疲れ様でした」


「ちょちょちょーい! 待ってください、自慢したいんです、言いふらしたいんです、久しぶりに出来た彼女なんです、ちょー話したいんです、でも誰も聞いてくれないんですぅぅぅ!!」


「そりゃここ最近ずっとその話ばっかりしてたら誰も聞いてくれなくなるだろ」


「ゴシップ大好きおばちゃんこと佐々木さんすら聞いてくれなくて! もう犬上さんしか残ってないんですよぉ!」


「お疲れ様でした」


「犬上さぁぁぁぁ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る