第7話 逃げ恥を今見返してみたらなかなか面白そう

 今思えば、前回のメッセージは彼女なりの思いやりであったのかもしれない。


 筆者くんには私は興味ないの。だからあきらめてほしい。でもそれなりに仲がいいし、同じクラスだからあんまりストレートに言ってこの先のクラス生活に角が立ってもお互いに面倒だから、少し遠回しな言い方をさせてもらうね。


 彼女の心中はこんな感じであったのかもしれない。


 だが僕は諦めなかった。ここで諦めておけば少しは違う未来もあったかもしれないが僕は諦めなかった。


 そして夏休みが終わった。

 課題は余裕で終わった。

 僕の心もなかなか終わっていた。

 なぜか。文化祭があったからである。

 僕はこの文化祭において、なかなかに頑張り、クラスに貢献した。

 もちろん彼女の気を引くためである。それ以外に思春期の男子が物事に熱心に取り組む理由などありはしない。

 そしてそんな頑張った文化祭ではあるが、結果はどうだったのか。


 学年で一位を取った。



 素晴らしい結果を収めたのだ。

 いったい誰が喜ばないというのだろうか。


 筆者である。


 頑張ったにもかかわらず、意中の子と全くお近づきになれなかったらそれは不貞腐れもするだろう。むしろ、行事に熱心になりすぎて少し周りが見えていなかったこともあり、嫌われたかもしれないと思ったのもある。


 なんにせよ、みんなは喜んだ。筆者は落ち込んだ。それだけである。


 そして時は無残にも過ぎ去り、時期は冬休みが終わり、一月も中盤、「逃げ恥」でガッキーこと新垣結衣さんがインフルエンザ並みの猛威を男子限定で振るっていた頃のことである。



 天子様との交信が途絶えた。


 そして僕は風邪を引いた。


 おそらくこの二つに関連性はない。だがそれはそれはひどいものであった。鼻水は壊れた蛇口のように出てくる。喉はいがぐりでも入っているのではないかというほどに痛い。ついでとばかりに頭は痛いし、もう風邪の症状のバーゲンセールであった。体感では三割引きである。


 僕はなかなかに抵抗した。


 三日間その症状を抱えて、通ったのだ。


 だが三日目、僕は風邪の前に敗北を悟った。


 なんかふらふらするのだ。


 速攻で保健室に行った。九℃五分の熱であった。

 もうアウトである。即座にアウトである。完全にアウトである。

 その日は即座に家に帰った。


 そして三日後風邪は嘘のように治った。

 やはり無理はよくないと思った。


 そしてさらに三日が過ぎた。

 僕は再び保健室で熱を測っていた。デジャビュである。

 そして結果が出た。

 38度7分。マイホーム帝国への強制送還が確定した。


 僕は荷物をまとめ、教室を出て行った。出ていくその時、彼女と目が合った。もうLINEのやり取りもしていない、ただのクラスメイトという以外に何の関係性もない彼女である。僕はなぜかよく覚えていないが、彼女に笑いかけた。気持ち悪いニチャーっとした笑みを投げかけた。

 そして教室を出て行った。





 帰りの電車でおもむろに携帯をいじっているとLINEの通知が鳴った。






 風邪、大丈夫?!(顔文字がいっぱい)




 彼女からのLINEであった。

 電車の中であるのに不覚にも僕は泣きそうになった。彼女の思いやりに泣きそうになった。世界よありがとう。こんな僕にも時には恵みの雨、慈雨を与えてくださるのですね。世界に万歳。そして彼女の思いやりに万歳。この世に存在する万物に万歳。

 大丈夫かは病院に行ってから連絡しようと思い、僕は静かに携帯を閉じた。

 病院で診断が出た。
















 インフルエンザA型でした。


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