青春アンソロジー「青の結晶」(9,347字)

20200119 文学フリマ Kyoto

青春アンソロジー 感想置き場

 また性懲りもなく感想を書きました。ネタバレ満載なんでご注意ください。あと書き殴りです、そして独り言。ほんとにクソみたいなことしか書いてません。ろくに推敲もしてないので、誤字脱字等あればすみません。長いから短いからどうこうってのもありません。本庄の文章力はクソで〜す。最近の悩みです、許してく

だせぇ。

 ああ〜表紙がツルツルしてる〜!

 こういう同人の文庫本のいいところは、表紙と裏表紙の工夫を生かせるところなんですよね。バーコードとかがないから、すんばらしいイラストを全部丸ごと使うことができる。


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古都の夜会のエメラルド

 そうか就活があるのか……。本庄はまだ就活じゃないのと、どうせろくに就職せずにうちの大学からコネがある企業に就職するので、就職から目を逸らし続けている。そんな自分からしたら、就活は青春のテーマとしてとても新しい。うまく描けないし、テーマに選ぶこともないと思う。門外漢の自分を、うまくいかない就活の描写で、ここまで青春を感じるというか、キュンキュンさせられるのはすごいと思う。えらそうな言い方で申し訳ないですが。

 心に残った描写が、綺麗なスニーカーを買ったのに使う機会がなくて、ずっと黒い革靴を履いていたっていうところなんです。そしてせっかくのスニーカーはぬかるみにハマっちゃった。切ないけどぐっとくる。

 あと、自由を生きるガッキーとの対比。本庄はどちらかというとこちら側だけど、その彼は自分から見てもさらに輝いて見える。本当に描くのがうまい。ガッキーをこんなにかっこよくて魅力的に書けるってすごい才能だなぁ。

 そして、私とガッキーをうまく溶け合わせる大文字山と流星群、そしてカンラン石ね(本庄はカンラン石っていう方が好き)。うまいなぁ。

 ガッキーいけめん。推しです。



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雨と大晴

 本庄ちも母子家庭なので(そのくせに本庄はバイトもせずに奨学金使い込んでるクソ野郎ですが)、すごく序盤からぐっときた。

 一つ一つの言葉が自分の心に刺さるんですよ。言葉の暴力をいっぱいに吸うとか、若さのない諦めに似た思いとか。あと、直接書かないのに、なんでお父さんが亡くなったのかがわかるところ。これはうまい。才能に嫉妬しちゃうわ。

 ザ青春じゃないのに、めっちゃ青春してる。ある意味大人びた中井との対比で、大晴の若さとウブさが浮き彫りになっているのがいい。綺麗だなぁ。これ簡単そうに見えてすごい技術ですよ。

 そしてそのまま失恋かぁ。だよね。知り合いの大学生って時点で気付いてた。ありきたりな失恋なんだけど、でも絶対に切ないところ、そこが本庄の心をめっちゃえぐります。

 家族と、初恋と、いろいろな妥協、うまくいかないこと全部含めて青春してて、でも大晴自身はたぶんそれに気付いていない。

 トータルではめっちゃ本庄好みの文章が最高だった。推しは大晴です。



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そのボールはどこへ消えたのか。

 増築に増築を繰り返したパッチワーク校舎、ミステリマニアの心をくすぐる最高の設定なんですよね。さすがあけびさん、ここらへんわかってらっしゃる。校舎の中を捜査するって学生にしか絶対できないので、こういうの本当に輝いてる青春なんですよね。設定が青春ミステリとして完璧すぎる。

 ギャグにミステリを絡めるのって結構大変なんですよ。自分も書いてるんでわかるんですけど。

 謎解きもすごくすんなりしていて納得するし、水に映った4本目のトーテムポールもすごくいい(それまでにポンコツ謎解きがたくさんあったのが趣をさらに醸し出している)。

 お姉ちゃん最高だなぁ! 最初にお姉ちゃん、最後にお姉ちゃん、この演出がニクい。いい。

 「善は急がば回れ」が最高に好き。あと(凛花のあだ名)←これも好き。



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キノ以下の旅未満の

 北海道の片田舎が嫌いだって話で、それは今田舎に住んでる本庄もかなり共感できる、というか、人は一度生まれ育った場所を嫌うスパンていうのがあるんだと思う。その時期はたぶん高校生だっていう人が多いから、それを題材に選ぶっていうのは、それだけで強力なんですよね。青春として。

 そして、その生まれ育った場所を嫌って行動に移せる人もいれば、絶対に移せない人もいる。その2人でモトラドに乗るっていうのが本当にいいなぁ。

 結局、その旅は一瞬で終わってしまったけど、それがまたいい。序盤から最後までめちゃくちゃリアルでした。すごかった。

 一度冒険して、元の場所に戻っちゃったけど、その冒険した経験が大事なんだろうなぁ。月並みな言葉だけど。



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例えばそれは、世界が色づくようで

 いきなりすごかった。この青春アンソロにフラッシュインパクトという概念が出てくるなんて誰も思わなかったはず。たぶんこの世界は彩度という概念がないので、明度だけで全てを表現するんだろうなとか、出版物やポスターは全てモノクロなんだろうなぁって想像するのが楽しい。テレビはどうなるんだろう。

 と思っていたら、藤阪さんの苦悩を聞いて、すごく驚いた。そうかぁ万色型だとそんな風に見えるのか。そりゃそうだよなぁ。

 最後のシーンで、どうして僕が藤阪さんにとって特別なのかわかって、すごくじんとした。こういうの好きだ〜!



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君を、思い、続ける。

 吹奏楽部ってブラックの温床だと思うんだけど、そういうところこそ青春できたりするよね。美也が入っている吹奏楽部は中学の時はひどくないようでよかった。安心して読めた。高校の時はキツそうだけど。

 でも和泉先輩と美也がくっついて幸せそうな美也を見るのは陸にも幸せだったんじゃないだろうか。同時にもっと苦しいはずだけど。フルートを吹く姿もいいけど、こっちを向いて笑って欲しいよねぇ。それが恋だもん。

 その切なさの時点でうまかったのに、和泉先輩が事故に遭って昏睡したとき、その相反が同じ関係のまま真逆に変わるのがすごくうまいと思った。こっちを向いて笑う未来が見えてきた幸せと、好きな人の好きな人の死を願う苦しさ。すごくそれがスッと入ってきてドキドキしました。

 人の思いに名前をつけることって難しい。この表現がすごく好き。



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かゆい

 心がムズムズするときのかゆいっていうのは、マイナスの使い方をすることが多いんだけど、この使い方は綺麗で好き。ちょっとプラスって感じの使い方がほんのりと心に染みるのがいいです。

 日常系の青春なんだけど、これ実はめっちゃ輝いてるんですよね。こんな青春送りてぇ〜。本庄には幼馴染みもいないし、異性と登下校もないし、文通もなかったっす。幼馴染みと文通相手の両方を意識して、そこで初めて自分の恋心に気がつくって最高ですよね。

 最後、エモくない? かゆくないって答えるのがエモエモすぎます。最高。



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君の恋を終わらせない

 おるおる、頭はいいのに遅刻するやつ(笑)

 というのはおいといて。担任、兄なんだ。こういうのいいな。めっちゃ好き。兄と弟の関係がすごく良くて、絶妙な距離感と絶妙な仲の良さがリアルでいい。水瀬を好きな弟と、その様子を近くから見る兄って構図、すごく良くないですか? めっちゃいい。好き。たまに入る兄弟の掛け合いも最高。

 彼女に振られた兄に、告白するクラスメイト。でもそのクラスメイトの正体。

 兄弟の仲が最高だっただけに、その2人のギャグが面白かっただけに、切なさが100億倍になる。胡散臭い数字になったけど、とても切ないのは確かです。

 最初は兄弟愛の話だと思ってたのになぁ。やばかった。

 ああ、お兄ちゃんは弟が水瀬を見つめる姿は見てたのに、水瀬から自分への視線には気づかなかったんだね。そう考えると兄弟愛がさらに増して見えて切なさが加わる。めっちゃエモい。好き。



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その白は名誉の証

 こんな出だしありかよ! めっちゃ笑いました。でもそれがそのまま私が兄を嫌う構図になるなんて。うまい。ずるい。こんな兄と双子なんて嫌だという気持ちもすごくわかるし、全ては描写力ですね。いじめの描写があまりにも鋭い(鋭すぎて、読む手が止まりそうなレベル)ぶん、妹の感情が本音として伝わってくるというか、痛いぐらいびしびし伝わってくる。めっちゃ表現がうまい。さすがすぎる。嫉妬。その腕食わせろ。

 兄のことが嫌いって言ってるのに、お兄って呼んでるのエモすぎませんか? ねえ? それでも兄妹は兄妹だなあという気持ちと、だから兄に対する当たりの強さが心抉ってくるよねぇ。

 妹を守る兄。兄の独白がすごく心に響きます。守るものは何なのか。芯がめっちゃ強い。でも白いパンツってだけでつい笑っちゃいます。すみません。でも我慢できなかった。

 最高の兄妹愛だなあ。最高。うん。本庄にもこんなお兄ちゃんが欲しかったなぁ。



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春を吸う

 いや、すごいなぁ。ある意味童話的とも言える文体が、この話の怖さを駆り立てているというか。文章にできないけど。

 幸せだった4人家族が1人欠けて、その瞬間に不安定になって、互いに互いをぐずぐずにした三角形を作っている感じというか。そのあたりがうますぎる。

 この1人ずつがそれぞれに病んでて誰もまともな人間がいない感じ、1人が1人にもたれかかっている感じ、そしてみんな揃って初めて生まれる病み、その描写のバランスがよすぎる。○○すぎるしか言うてないけど、本当にすごい。春が好きです。

 本庄ちも母子家庭なんですけど、やっぱこうやって病んでみるのもアリかなって思うくらい、なんか恍惚とした憧れを持ってしまう感じの話。本庄の文章力がクソですみません。死んできます。



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ひつじ彼女

 ひつじちゃんがかわいい。こんな女の子と付き合いてぇ〜!

 これ、あれや。うらやまぢいってなるタイプの青春や。

 ひつじを名乗り、ひつじに見える女の子は、どうしてひつじなのか。それを解き明かすミステリみがあって良かった。日常ミステリ系というか。でもこんな柔らかいタッチで謎をうまく絡めて青春小説を書くなんてできる? すごい。

 青春は傷つきやすいものなんだけど、その傷は傷を負った人には痛いものなんだなぁって自覚させられたような感じでした。本庄は青春らしい青春を送ってこなかったので、物語を読まないとわからないんですよねぇ。

 最後、一瞬こんな悲しいことがあるかって思ったけど、結局はハピエンオタクの本庄には満足すぎるエンドになりました。はぁ読後感が爽やかすぎる。よき。


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そしてまた、不幸の欠片を凌辱する。欠落は欠落で埋める。

 不幸に狂喜乱舞する女の子って、正直異常だと思うし、ヤバいって思わされるんだけど、どこか強い魅力がある。というか、不幸自体にすごくエネルギーがあるんだよな。このエネルギーにずっと向き合い続ける小説って、しんどくならないかと不安だったけどそんなことはなくて、熱意が溢れていたのにグイグイ読めた。すごいな。

 最後、舞と男の子の対比が良かった。強く生きることができるできない、というのは、反対のように見えるけどどっちも人だし、人の生き方としてアリ。って思わされた話でした。

 欠落は欠落で埋めるっていうタイトルがすごく好きなんですよね。ちゃんと作品内に生きてくる、その瞬間がすごく好きなんです。


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27-トゥエニセブン-

 本庄は音楽全くダメで、わからないところも所々あったんだけど、すごく青春してるなぁ、それだけはわかった。すごい熱意だった。若いうちに全てを出し切って、27クラブに名前を連ねること、ある意味狂っているようにも見えるけど、本城は割と好きな概念です。そういえば尾崎豊もそれくらいに死んでなかったっけと思ったら26歳でした。惜しい。だから明日さんが日本人最初の27クラブだったんだね。

 17歳で死ぬ定めだった明日あすかが27歳で死んだっていうそれだけで青春に思えました。そのロックの裏に、こんなドラマがあったなんて。いいよな、ほんとロックだよ。本庄はロックわかんないけどめっちゃロックだよ。

 たぶん僕は本物の悪魔だったんだと思う。悪魔だよ。ほんと。



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ミネラル

 ハァ〜文章うまいなぁ。大麻の匂いの描写が正しいのかはわからないけど、なんか正しそうな気がする。一千万円の仕事を請けて、お金が入ってもいないのにクレジットカードが止まるまで使っちゃって、友達に泣きついて、変な薬もらって、一千万円の絵を描いて、描いたら液タブ売っちゃって。パンクだなぁ。

 本庄は絶ッ対にやらないけど。

 一千万円の仕事ってなんなんだろうと思ったら、ああそういうことだったのか。退廃している話って結局退廃したままなのが多くて、それはそれですごくいいんだけど、その裏の、普通で穏やかな生活とのつながり(うわあここらへんの本庄の表現力カスすぎるやろ爆笑やな)が見えてる話っていうのをはじめて見たかもしれない。つまり、渋谷の退廃した人たちをそういう人たちって思うんじゃなくて、自分と同じ世界を持ってる人だと思えって教えられたような。教えられたことは今までにもあるかもしれないけど、何度だって教えられていい。いやよかったほんと。

 これ最後に持ってくる稲穂さん天才すぎるな。

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