よくある異世界物 〜奴隷は喋らない〜

 異世界にきた。王道を行く剣と魔法と魔物のファンタジーな世界にである。


 隣を見れば、薄着の少女の服が自身の汗により透けている。

 これが自室であるならば、手がどこかに伸びていただろう。

 だが残念な事にここは炎天下の下。お天道様が見てるとかそういうのは気にしないが、人の目は流石に気になる。


 周囲には同じく薄着とも言えない布っきれを纏っただけの男女が死んだ目をしながら歩いているのだ。

 私の性癖にはそういうのは載っていない。

 私は彼女の膨らみを凝視しながら、周囲の皆と同じ様に行軍を続けるしかないのだ。


 彼女以外のおっぱいの力も借り、脱落する事なく今日も生き残れた。

 悲しいかな私も奴隷。の予定だ。今はまだ商品の一つだが。

 それも王族やどこそこの有力貴族の血をひいてるとか、そういうのは一切ない、口減らしで捨てられていたこの世界では掃いて捨てるほどいると言えば大袈裟ではあるが、その様な物である。



 落伍者は見捨てられる。これは仕方ない事だ。仕方ないの四文字で片付けられてしまうのは悲しい事だが。

 私の原動力となっていたおっぱいも、今はどこかの獣のお腹を満たしたのだろう。

 それはとても悲しい事だ。無力な自分を許してくれ、おっぱいよ。

 そして明日からもよろしくおっぱい。ありがとうおっぱい。おっぱいに感謝を。

 私のこのこぶりなおっぱいも、おっぱいが私の源になったのと同じ様に、誰かの原動力になってると良いな。

 それはそれとして、この変態野郎が!死ね!とも思うが。



 手のひらに収まるぐらいの朝食を手早く硬いパンを噛り、おっさん魔法使いが出した真水で流し込み終えると、今日も行軍が始まる。私は彼の事を水配給おじさんと読んでいる。

 その水配給おじさんが魔法の水で魔物を二分しているのを見た時、魔法すげぇと思った。彼が凄いのかもしれないが。


 目指すは近くで一番大きな街。そこで年に一度の奴隷大商い会が行われるらしい。飯の最中に奴隷商が「楽しみですねぇ」とか言ってるのを小耳に挟んだ。

 売る人買う人仕入れる人。

 きっと街も、落伍者を狙っている道中の野生の獣らもこのイベントを楽しみにしているに違いない。くそったれ。


 着いたらおっぱいはかなりも減っていた。雄っぱいもそこそこ減ってはいたが、雄っぱいはどうでもいい。

 長い道中、尻に浮気しそうにもなった。おっぱいが減った事、それと肉体と精神の疲労。

 どうやら私は錯乱状態に陥っていたのかもしれない。

 街を囲む石壁が視界に入るまでは、前を歩く男の子の尻に何かしらを感じてしまう状態であったのだ。


 手続きを済ませたのか前の仲間が入街を始める。私もそれに着いていく。

 ぞろぞろと街中を奴隷行進隊が進む。

 新しい街、新しい人々。そして新しいおっぱい。ここはおっぱいと雄っぱいで溢れている。

 おっぱい飢え症候群に陥っていた私の心も幾分かは回復する。これはまるでおっぱいの暴力だ。


 残念な事は奴隷の私らと違い、彼女らはちゃんとした服を着てる。それによりおっぱいエナジーは減衰してしまう。それでもおっぱいはおっぱい。やったぜ。



 イベント会場だろう大広場の外れで水配給おじさんに雑に水をぶっかけられ、鉾を落とす。布は与えられないので纏っていた布っきれを絞り、身体を拭いていく。絞って汚水を出し、また拭く。

 地面は皆の汚水が混じり合い、泥濘が出来て非常に汚いが、石畳の方に移動させられ泥に塗れた足もキレイキレイしてもらう。

 少なくない人数に水を放出出来るこの水配給おじさんは案外とそこそこ凄い人なのかもしれない、と思った。



 3つの大きな檻がある。

 男と若い女と中年以上の女に分けられ、入檻させられていく。


 私はもちろん若い女。美はつかない少女である。商品にさせられた時から考えていたが、どうやら現実はもう直ぐ側にいるみたいだ。

 そこそこの街では私の低いおっぱい力に結果助けられ娼婦にならなくても済んでいたが、この規模の街である。

 おっぱい力が低い?それが良いんじゃないか!合法で万歳!とか、手足と泣け叫べる口が付いていれば無問題!な人だってゴロゴロいるだろう。きっと。



 少し広くなった檻の中で思う。

 あ〜ぁ、なろう系主人公が現れて、買い上げて屋敷のメイドにでもしてくんねえかな?と。

 珍棒咥え込みたくねえからメイドな。夜は期待すんなよ。あと三食昼寝付きな。

 そんな事を考えているとお向かいさんの奴隷商も到着したみたいだ。

 私達と同じくぞろぞろと檻に入っていう同胞達。あいつらも私と同じ様に売れ残れば良いのに、と思いながら見ていると、その中に私は見つけてしまったのだ。オーラ力がぱねぇ少女らを。


 銀髪……おっぱい力S……儚げ……気品ありそう……これは間違いない……彼女は……彼女が……主人公の穴だ……

 それだけじゃない……続くは猫耳……それと犬耳……おっぱい力は私より少し上のEと言った所だろうか……それでも彼女らは間違いない……間違いなく彼女らは……彼女らが……主人公のハーレムメンバーだ……


 神と主人公は私に微笑まない……






 一週間後。

 手足と頭部が欠損したおっぱい力Fな少女の身体が発見された。

 それから三ヶ月後。黒髪の少年らがその犯人である弱小貴族の家に押し入り、色々あってその弱小貴族一族は死刑になった。

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