(ⅴ)

「あんたらに頼んだのが間違いだった」

 俺が「寛永寺僧伽」のフロント企業の事務所に戻って来ると、中から聞こえたのは、俺と同じか少し下ぐらいの年齢の女の子の声だった。

 ここ2〜3日の間、関わった女ほぼ全員の「男にクソ女と思われたとして、それで、あたしに何か不利益でも有んの?」って感じの声とは違う、アイドルや萌えアニメの声優だと言われても違和感の無い声。

 しかし、言ってるセリフは、声の感じとは逆に、あいつらが言ってもおかしくないモノだった。

「何だと⁉」

「あ……違いますッ‼ あたしがそう思ってんじゃなくて、ウチの総帥グランドマスターからの伝言ですッ‼」

「ああ、そうか。じゃあ、あいつに伝えろ。恩人を殺しちまった罪悪感はテメェの問題だ。自分で何とかしろ。他人ひとも、その『恩人』の子供も巻き込むな、ってな」

「何だ?」

「ああ、帰って来たか、小僧。俺達は、もう、この件から降りる。その強化服パワードスーツの修理が終ったら、さっさと出て行ってくれ」

「おっさんさぁ……ひょっとして、舐めてた『本土』の連中が、実はチート野郎だったんで、ビビってんの?」

 スキンヘッドのリーダー格は、溜息を付いた。

「正直に言や、そう云うこった。お前も夢は捨てろ。お前は……お前の親父とは違う」

 多分、俺は、今、不機嫌そうな顔をしているんだろう。

「ここで、修理だけはしても良いんだな……。ブッ壊されてないPCを1つと、LANケーブルを1本貸してもらえる? あと、ドライバー一式」

 「本土」の今村と望月ってヤツが、そもそも、この「島」に来た、本来の目的……中古の電子部品の即売会は、今日までだった。

 そして、俺は、そこで何とか見付けた。あのチビに粉々にされた「水城みずき」の制御コンピュータのCPUとメモリ……それと互換性が有る型式のCPUとメモリを……念の為、予備を含めて複数個。

「で……ところで……こいつ誰?」

 俺は、制御コンピュータにCPUとメモリを取り付けながら聞いた。

 俺が居ない間に部屋に来ていたのは……大人しそうな感じの、俺より少し年下の眼鏡っ娘。三つ編みにした髪を左肩から垂らし、服装は、顔と合ってないストリートファッション風。夏なのに、ダブダブ気味のデニム地の長袖の上着を着ている。

 眼鏡は、どうやら携帯電話を兼ねた眼鏡型携帯端末らしい。

「え……えっと……『薔薇十字魔導師会・神保町ロッジ』の階位1=10・熱心者ジェレーターの更に候補生で、『無属性』の魔術師で……魔術師としての名前は『紫の女司祭プリーティス』……」

なげぇよッ」

「ご……ごめんなさい……」

 クソ……レナや妹の仁愛にあがあんな性格な上に、ここ何日か、気の強い女とばっかり関わったせいで、逆に、こんな気が弱そうなを、どう扱っていいか判んない。

 もし、彼女が出来るなら、こんな感じのがいいな〜、とか思ってた通りのなのに、現実に目の前に居られると、妙にイラつく。

「で、本名は明かせないんだろ」

「は……はい」

「で、何しに来たの?」

「あの……ウチの総帥グランドマスターから……石川さんの手伝いをしろと……言われて……」

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