(ⅲ)

「な……何しに来やがった?」

「聞きたいのは、こっちだ。何で、そいつらと手を組んだ?」

「うるせぇッ‼」

 スキンヘッドの1人が、メスガキに殴りかかる。

 だが、メスガキの姿が消える。

「えっ?」

 スキンヘッドの頭に、いつの間にか机の上に飛び乗っていたメスガキの蹴りが入る。

「吽ッ‼」

 別のスキンヘッドが咆哮と共に、メスガキに掌を向けたが……。

 ボンッ‼

 メスガキの辺りで、一瞬だけ、閃光が現われたかと思うと、メスガキが着ていたライダースーツのプロテクターに、「田」「九」「厶」を組み合わせたような見た事も無い漢字が浮かび上がる。

「めずらしいな……日蓮宗の鬼子母神の護法か……」

 スキンヘッドのリーダー格が、そう言った。

「おい、やっちまっていいか?」

 もう1人の侵入者がそう言った。

「ああ、死なない程度に、全員、ブチのめしてくれ」

「そうか……じゃあ……『ぶちのめす』」

 何故か、その「ぶちのめす」と云う一言は……俺やスキンヘッド達じゃなくて、そいつ自身に言い聞かせているように聞こえた。

「不自惜身命」

 続いて、メスガキが呪文のようなモノを唱える。

「どう云う事だ?」

 スキンヘッドのリーダー格が怪訝な顔をする。

「どうしたんだ?」

「呪文……じゃねぇ。何の『気』の動きも……いや……だが……?」

 次の瞬間、男の姿が消える。

 ガンっ‼

 聞こえた音は1つだったのに、並んだ机の上のノートPCが次々とひしゃげ、事務用品が跳ね飛んでいく。

「ぐへっ‼」

 一瞬だけ消えた男の姿が見えた。スキンヘッドの1人が、頭に男の飛び蹴りを食って、吹き飛び、壁に激突する。

「がっ⁉」

 続いて、別のスキンヘッドが派手に宙を舞い、床に叩き付けられる。

「うげっ‼」

 更に別のスキンヘッドの鳩尾と胸が何者かに殴られ、しかも、不自然に潰れた鼻から鼻血が出ている。

 次々と物音と悲鳴。スキンヘッド達が1人また1人と倒れていく。

「魔法じゃなかったら……これは……何だよ……えっ?」

 気付いた時には、メスガキが、スキンヘッドのリーダー格の喉を掴んで……どうなってんだ? 中学生ぐらいの体格のヤツが……自分の倍近い体重のヤツを片手で持ち上げてる……。

「ただの自己暗示だ……。俗に云う『火事場の馬鹿力』を引き出す為のな」

「は……はな……せ……この……ガキ」

「了解した」

 スキンヘッドのリーダー格は床に叩き付けられた。

「御希望に沿えたかな?」

 メスガキは、呆然としているスキンヘッドのリーダーにそう言うと、俺の方を見る。

「改めて聞こう……。こいつらと手を組んで……何をする気だ?」

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