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『お前ら……見損なったぞ……。人の心ってモノが無いのか? そんな可愛い子の腹を惨たらしく切り裂くなんて……』

 瀾って子は、腹を切り裂かれた「タル坊」のヌイグルミを見てそう言った。あたし達は、念の為、ヒゥ君の鞄の中に有った、昔の子供向けアニメに出てきた気の弱そうな顔の恐竜のヌイグルミの中に入っていたGPSを取り出して、勇気の部屋の「水城みずき」の中に仕込んだ。

 その事を瀾に伝えたら、最初の反応がコレだった。モバイルPCの画面に映っているのは、気の弱い人が警官でも嘔吐するかも知れないレベルの惨殺死体を見せられたような表情。

「また始まったか……」

 荒木田さんは、やれやれと云った調子で、そう呟く。

「あのさぁ、これ、生きてないよ。ヌイグルミ。あたし達は、ヌイグルミを分解しただけで、サイコパスの連続猟奇殺人鬼じゃないよ」

『ヌイグルミを切り刻むって、犯罪モノの映画やドラマのサイコパス描写の定番だろ‼』

「ここは、映画やドラマの世界じゃなくて、現実。そして、これは、単なるヌ・イ・グ・ル・ミ‼」

『待て、ヌイグルミと言っても、その子は……』

「高木、この件は後でゆっくり議論してくれ。まずは、石川さんの『水城みずき』が移動した。場所は……『有楽町』だ」

 そう言ったのは望月君。

『判った……もうすぐ……「兄貴」ともう1人と一緒に、そっちに着く。……しかし、「おっちゃん」から聞いたけど……あの勇気ってヤツの親父さんは……有名人だったみたいだな……』

「うん……『秋葉原』の自警団のリーダーになる前、富士の噴火の時に……あの『水城みずき』を使って……沢山の人を助けた。と言うか……それが有ったから……『秋葉原』の自警団のリーダーに祭り上げられちゃった……。う〜ん、でも、子供の頃のあたしから見ても、性に合ってなかったみたいで……いつもストレス溜めてた。死ぬ前の2〜3年間は、勇気んから出るゴミの中に、お酒の空瓶がやたらと……ね……」

「なぁ……『ロクデナシの父親を持つ子供の会』に、あの人も誘う?」

 今度は今村君。

『後で考える……。どう転んでも……あの馬鹿の未来は暗そうだな……』

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