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 そして、男性陣は勇気の部屋に泊まり、荒木田さんはあたしの部屋に泊まる事になった。

 部屋の外からは、荒木田さんとヒゥ君の着替えを洗う洗濯機の音。

「ずっと1人で住んでるのか?」

「勇気のお父さんが生きてた頃は……勇気のお父さんが親代わりだった。それ以降は、ずっと1人」

「気を悪くする質問かもしれないけど……生活費なんかは?」

「国連機関だか外国のNGOだがやってる生活保護と高専学校の奨学金……あとはバイト」

「就職先は有るのか?」

「『本土』か……さもなくば外国かのどっちかだと思う」

 話す事もなくなり、荒木田さんが洗濯物をベランダに干した後、私達は眠りについた。

 TVも無い。本は学校の教科書だけ。主に高専学校で使ってるモバイルPCが一台。何もする事が無い帰ったらシャワー浴びて寝るだけの殺風景な部屋。

 夜中に目が覚めて、ふと、枕元の目覚まし時計を見る。日付は八月一六日。

 そうだ……。丁度、今日で、一〇年目だ……。

 富士山が爆発してから……。

 一応の故郷が無くなってから……。

 かつての「首都圏」が壊滅してから……。

 そして……あたしが「富士山の女神」を名乗る存在に取り憑かれてから……。

 この「神様」が、前に取り憑いていた「お姉ちゃん」が殺されてから……。

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