(5)

 そして、午後4時ごろ、勇気の部屋には、様々なモノが持ち込まれていた。

 あたしと勇気が、高専学校の実習室に3Dプリンタで作った強化服パワード・スーツ水城みずき」の装甲。

 原チャリ用のヘルメットと作業用の手袋と防塵マスクとミラーグラスの作業用ゴーグルと作業着が各2つ。安全靴足が1つ。ネジその他のホームセンターでも買える「水城みずき」の補修に必要な物品。

「作業着だったら、高専学校のを持ってるけど……制服代りのヤツ」

「まさか、その作業着、学校名とか入ってないよな?」

「あっ……」

「身元をバラす気か? 当日は、動き易くて、どこでも売ってるような服でやる。下も長ズボンだ。出来れば厚めのヤツ」

 そして、小型の無線通信機が4つ。

「えっ? これ、普通の無線機じゃないですよね?」

 勇気が無線機を手に取って眺めながら、「本土」から来た2人に聞く。

「ええ、早い話がWi−Fi接続型の小型のIP電話みたいなタイプです」

「それなら、島の端から端まで通じるだろうけど……Wi−Fiはどうするの?」

「明日、本土から来る応援が衛星回線経由のモバイル・ルーターを持って来てくれる事になってます」

 続いて、四〇㎝×四〇㎝×二〇㎝ぐらいのドローンが3つ。

「あのさぁ……その……何て言うか……大きくない?」

「小さいと、ちょっとした風でコントロールを失なうんで」

 ん……ちょっと待てよ……。

「えっと……去年あたりに、小型ドローンをJRの線路に墜落させて電車を止めた馬鹿な高校生が居た、ってニュース見たんだけど……たしか……久留米のM学園の……」

 何故か望月君が今村君の方を見る。

「……こっちでもニュースになってたのか……」

 ボソリとつぶやく今村君。

「一応、言っとくと、やらかしたの、こいつじゃなくて、こいつの部活の先輩です」

 フォローっぽい事を言う望月君。

 どうやら、心当りが有ったようだ。なるほど、そう云う知り合いが入れば、風の影響を気にするよね……。

「じゃあ、後は……コードネームを決めるか……」

 荒木田さんがそう言った。

「コードネーム?」

「身元がバレないように、作戦中は本名は使わない」

「作戦?」

「他に何て呼ぶんだよ? 喧嘩か?」

「まぁ、確かに……」

「じゃあ、ボクはアルジュナで、光さんはダーク・ファルコン」

 ヒゥ君が、そう言った。

「やめろ」

「……な……何、それ?」

「オンラインRPGのキャラ。ボクのキャラが聖戦士パラディンのアルジュナで、光さんが闇のオーラを使う武闘家モンクのダーク・ファルコン」

「だから、やめ……」

「さっさと決めましょ。俺は『ファットマン』で」

 続いて望月君。

「何で痩せてんのにデブファットマン?」

「あと、何、さらっとヤバい名前付けてんだよ? 差別用語言ってウキャウキャ喜んでる中学生か、オマエは?」

 あたしと今村君が同時にツッコミを入れる。

「デブ……ガリガリ……じゃあ、俺は路地裏の男ガリーボーイで」

 続いて勇気。

「インドかどっかのラッパーに、そんな名前の居なかった?」

「そうだっけ?」

「じゃあ、俺は『早太郎』で」

 今度は今村君。

「早太郎って、何かの昔話に出て来る白犬だろ。能力がバレバレじゃないのか?」

 そこに、望月君のツッコミ返し。

「どうせ、変身しないと使えないけど、変身したらバレるような能力なんで関係ない」

「で、レナは?」

「じゃあ、ルチア」

「何それ?」

「あたしのクリスチャン・ネーム」

「クリスチャンだったの?」

「一応、先祖代々の由緒正しいカトリック」

「し……知らなかった」

「まぁ、日曜日に教会に行きたくても、この辺りには無いし」

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