第5話
「ここ………どこだっけ?」
ぴちちち。
ぴちちちち。
ぴちちちちちちち。
と、窓の外から小鳥の鳴く声が聞こえてくる。
朝がきて、ベッドから起床したあと半分寝ぼけながら周りを見渡す。
木で出来た家具と木の温もりが感じられる壁が見える。
自分の家はこんなんではなかったような気がする。
違和感を感じながらも、でもとても心地良い感じの部屋だ。
足元でもぞもぞと動くものがある。
目線を足元に向けると、ベッドの上で3匹の猫が思い思いに大の字で眠っていた。
その姿を見た瞬間、昨日起きたことが思い出される。
ああ、そっか。
そういえば、異世界に来ちゃったんだっけ。
現実ではあり得ないことだから無意識に昨日のことは夢だったと思っていたが、どうやら違ったようだ。
足元ですぴょすぴょ安心しきって寝ている猫たちを見ながら心が癒されるのを感じる。
「そういえば、仕事もないんだった。でも、当分の資金は貰えたし・・・。」
慌てて飛び起きて仕事をしなくてもいいなんて、なんて素晴らしいんだろう。
ここには、古い考えに囚われ融通の利かない上司もいないし、手を煩わされる部下もいない。
そう思うとすこしだけ、ホッとする。
これからの生活に思うところはあるけれど。
「今日は何をしようか。」
そんなことを考えることなんて、ここ数年はなかった。
平日は仕事三昧だし、土日だって次の月曜日からの仕事のことを考えていて正直心は休まらなかった。
今日は何をしようかなんて、考えることができるスローライフもいいかもしれない。
うん。いいかもしんない。
ぐきゅるるるるる~~~。
「って、朝ごはんどうしよう。」
昨日のうちに食材を用意するのを忘れていた。
この家には保管庫というものがあり、保管庫の中に入っているものは時間経過を受けないため保管庫に入れたままの状態で取り出すことができる。
その中に何か入っているだろうか。。。
私はベッドから猫たちを起こさないようにそっと下りると、キッチンの脇にある保管庫の中を覗き込んだ。
中には3つの缶詰と、3つの小袋と真っ白い手紙が入っていた。
「食べれるのかしら・・・?」
缶詰にも、小袋にも猫のシルエットが描かれている。
迷いながらも、手紙を開封した。
手紙には猫たちへの食事の方法が書かれていた。
基本的には一日2~3回に分けて、1匹につき缶詰一個と小袋一袋を食べさせて欲しいという内容だった。
「やっぱり、私の朝ごはんじゃないのね・・・。この村には、朝ごはんを売っているところはあるのかしら。」
異世界生活2日目にして難関に突き当たってしまった。
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