人として生きること、そして〝人の気持ち〟…… それがテーマです

※第1章38話まで読んだ感想です。


◆お薦めしたいのは、こういう人
〝登場人物に寄り添うことで時間を共有する〟 そういうふうに「物語」の楽しむ、という読書をされる方。
小野不由美の「十二国記」、その前日譚「魔性の子」のような創りと もってぃ は感じました。
1話単位で何処からでも読み始められ、その話だけ読み終えるだけでも満足できるような、お気軽に楽しめる作風ではありません。
話が進むにしたがって明かされていく事柄と、それに翻弄される登場人物──殊に主人公の〝瑚子(ここ)〟──の機微、心情を読んでいくことになります。
結構ヘビィですが、その分〝読み応え〟があります。


◆見所
やはり主人公の心情の描写です。
ですが主人公一人だけの「物語」ではありません。主人公の周囲に生きる登場人物たちにもそれぞれの「物語」があり、そういったものが主人公 瑚子 の、思春期の女の子の人生(半生?)に絡んできます。
全編を通じて緊張感のある筆致となっており、作中世界を生きる人物たちの行動や言動に説得力が感じられます。

そしてそれを支える世界観がしっかりと構築されています。
九州長崎の街のディテールも、高校時代の生活──時間の流れ方、人間関係──の描かれ方、それぞれの家庭の事情……。
加えて〝ファンタジー〟としてのギミック。
それら全てにリアリティを感じられます。


◆ここはちょっと……という所
地の文の描写は、何とも独特な言い回しです。
ちょっと普通じゃない表現も多いです。
セリフも長崎の言葉で語られるところが多いです。

そうすると、頭に自然と入ってくることが妨げられることも多いです。
 〝ちょっと情景が思い浮かばない〟
 〝どういう感情を表現してるのだろう?〟

そんな感じに思考を中断させられることも正直多いです……。


でもね── そこで読むのを止めちゃうのは〝すごくもったいない〟作品なんです。

頭に入ってきにくい所があるのは確かですが、少し読み進めれば、そこにも意味を読み取れます。
独特の言い回しが、この魅力のある世界観を表しているのも解るようになります。

なので、自分は〝頭に中々入ってこない〟部分になったら、とりあえず小さな事には拘らないで読み進める、という読み方をしています。
(そんな読み方は、紙媒体の古い小説を読んできた身であれば、割りと普通です。w)


読んだことが〝時間の無駄〟と感じることはなかった! と断言できますよ。

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