第6回 【悲報】バグで職業欄にスキル名が混ざりこんでたので【選んでみた】

## 概要

今回の作品はこちら。


・【悲報】バグで職業欄にスキル名が混ざりこんでたので【選んでみた】

https://kakuyomu.jp/works/1177354054891123597


作者はNagi3!さんです。

https://mobile.twitter.com/Nagi3desu


これも一気読みでしたね。今回はこの感想シリーズ初めてのギャグものです。めっちゃ面白いのでこんな感想を読む前に本編を読むのだ! それではネタバレ解説です。


## あらすじ

なろモンGO以来の大きな社会現象となるフルダイブ型VRゲーム〈ワールドゲーム〉を発売と同時に購入し、同じ大学のメンバーを中心に共にゲームを始めた。


このゲームでは、後から職業の自由な変更やリセットなどはできない。にも関わらず凪は、何故か職業選択欄に混ざりこんでいたスキル名[盾術]を興味本位で選択してしまい、彼の職業は意味不明にも[盾術]となってしまう。


そんな中、突如発生する事件 ( /°q°\ )ギャー!!


そしてワールドゲームは、世界を―――


(公式より転載)


## 感想

すげえ面白かったです。VRネットゲームの世界で最強を目指す話なんですが、ギャグもので、終始笑いながら読んでました。気がついたら最終話まで読んでしまった。

自由度の高いVRネットゲームがあったらこんなことが起きるよね? といった感じの笑いや王道の展開を逆手に取った笑いが物語の原動力なのですが、案外丁寧に伏線を貼っており(そしてそれらもギャグに回収されていき)、この人基本的にストーリーがうまいんじゃないか......? と思います。突飛な設定のキャラクターが出てきて力技でギャグを回すとかが全くなく、それにも関わらずこれだけ定期的にギャグを散りばめさせることができるんだからすごい。

もうほんと好きで、笑える以上に好きなシーンが沢山あります。異種族たちの会議が毎回紛糾してしまうシーンとか、名前が飛んで行ってしまうシーンとか......。あげたらキリがないので全部はあげませんけど。


## 分析

本作、この企画にとって初のギャグものなので、このギャグについて少し分析をしてみたいと思います。


本作はいろんなパターンのギャグがあるんですが、その中の1つに「テンプレートな展開をさせつつ、緊張感の高まったところで梯子を外す」というものがあります。(後述しますが、テンプレートと言うのは決して悪い意味ではありません)


1つだけ具体例をあげて解説してしまうと、11話がそれです。11話は直前に主人公の友人が謎の死をとげており、その謎を解くためにゲームの世界で最強になろうと主人公が決心します。そして、レベリングのためにギルドに向かい、するとギルド内で複数人の大人に絡まれている少年を見かけます。


これ、普通ならこの少年を助け、見返りとして何か情報がもたらされるとか、少年が仲間になるとか、そういうふうに進むはずなんですよ。


ですが、ここで梯子を外すギャグが入ります。


このような、テンプレートな熱い展開がくるか? と思わせて外すという笑いが多いです。


落語家の桂枝雀は著書『らくごDE枝雀』の中で笑いは緊張と緩和だ、と言っています。熱い展開を持ってきてこのあとどうなる? と物語の緊張感を高めてからのボケはまさにこの緊張と緩和です。


また、この「テンプレ展開からの笑い」という技法を使うにあたって、前提条件に「よくあるストーリー展開が書ける」というのがあります。このよくあるストーリー展開というのは、私たちが小説や漫画、映画を見ていく中でなんとなくこう来たらこうなるだろう、と無意識のうちに予想する展開です。その無意識に学ぶストーリー展開を外して笑いにするというのは、つまり、無意識を意識的に外すという行為です。これってすごいと思いませんか!?(興奮)


こういうの文学的な用語で前景化っていうと思うんですが、ギャグが入るたびに「あ、自分このシーンに見事に乗せられてたんだ」と気づかされる体験は、なんかもう一種文学的な体験ですらあったと思います。


ギャグマンガ家がその後ガチのストーリーものやるのは、こう言う、ストーリー展開を外すと言う行為(つまり、みんなが意識しないテンプレートな展開を前景化しすること)をやり続け、ストーリーの本質に辿り着いてしまったからなのではないか......今回はそんなことを思いました。


いつもはここから脚本術の知識を使いつつ改善するならどうこうというのをやるんですが、今回はストーリー構成を崩すお話なので指摘するのも無粋かと思います。荒削りなところのあるお話かもしれませんが、物語についての本質を押さえたお話だったんじゃないでしょうか。


以上!!!

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