綾子 第二部 姫と従者 

宮上 想史

第1話 お伽噺

おとぎ話

 昔、昔、あるところにお姫様がいました。

 毎日、毎日お城の中で過ごすばかり、退屈で、退屈で仕方がありませんでした。

ふと思ったのです。

 城から出たいと。


「ねえママ、それからお姫様はどうしたの?」

「それからね……」











 



 

姫と従者

 桜色の花が満開を迎えて、少したち新緑が萌えだした頃。

 天氣は快晴である。

 異国から来た男の髪は黒く、長い毛を後ろでくくっている。

 この国では見慣れない服装をして、腰に下げていた武器も一風変わっていた。

 外国の人間だから周りの目を集めていたわけでなく、どちらかというと、美しい人間だったから視線を集めていたというのが強かったようだ。

 人の目など氣にせず、ある場所を目指していた。


 一人の若い男が五人ほどに囲まれているのが視界に入った。

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