ライラック - 美波
Youtubeにおすすめされて聞いたらハマってしまった美波さん。僕は元々女性のソロシンガーが好みで後で紹介すると思いますが、宇多田ヒカル、天野月子、日食なつこ、元ちとせという方々を良く聞いていたんですよね。
そして、何気なく再生したこの美波さんのライラックは好みどストライクでした。女性特有の伸びやかな高音に、ブレスの仕方、生き難い世界を叫ぶ歌詞……。爽やかなPVも素晴らしいですね。抜けるような空の淡い青が多用されていて、視覚的にも綺麗。東京の西部線沿いに住んでいたこともあり、住宅街を一人で歩く時のどこか厭世した雰囲気が思い出されます。
でも、歌っているのは窮屈な毎日。それが良いんです。
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いつかの声が今僕の心を窮屈にしていく
ああだったんでしょ こうだったんでしょ
身勝手解釈receiver
変わらなきゃ飽きましたって 変われば変わりましたよねって
一体なんだい? それなんだい?
矛と盾は無くならないようでして
幸せはピンぼけする不良品アイシャッター
苦しいことは繊細に映る高画質レンズで
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常に変化を求められる日々。現状維持バイアスが効いた世界で、変わるものを求める人々。自分を棚に上げて好き勝手に飛び交う言葉。やはり、そんな思いは誰もが持っているものだと思います。本音と建前に振り回されて、自分の位置が良く分からなくなるような感覚というものが。
そして人は本能的に損失を嫌います。クーポンを使って1,000円お得になった店と、表示が間違っていて会計時に800円値上げされた店では、どっちが記憶に残るでしょうか。幸せと苦悩というものはそういう関係で、苦悩が頭に残りやすい。そのことを見事に二行で表現しています。
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人生そうハイに
人生そう前に
人生聡明に生きたいのは山々だが
割と根拠も証明もないような現状世界くらいが丁度よくて
人生そうラフに
人生そうタフに
人生そうゲームみたいに単純なものでいいだろ
A・Bボタンで賭けて決めたい未来もあるんだ
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サビでは韻を踏んで理想の生きざまが歌われます。軽やかに人生を駆けたいのは山々ですが、そう出来ないことは分かっている。自分の価値が特別ではないことが分かっている。だから、もっと単純な世界であって欲しいのに。入り組んだ中で光る正解の道を探し出す、そんな能力もないことが分かっているのに。
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もう実際どうにでもなれ
押し殺した声でやりたくないことに
軽々しく頷くのはやめろ 上げろ 顔を 上げろ
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半ば捨て鉢になっているのですが、それが自分の希望であることに気付く瞬間があります。ベストセラーになった「嫌われる勇気」に似ているでしょうか。他人の期待に応えようとしない。他人を褒めない、貶さない。今の自分から見ると「そんなこと……」と思えることをやってみる。僕の言葉で言うと自己中に生きる。自己中心主義はもっと広まるべきです。好きに興じて、生み出された効用を分け与えようとすればいいと思います。
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人生そうハイに
人生そう前に
人生聡明に変わりたいのは山々だが
私は根拠も証明もないような現状世界くらいがお似合いだ
―――――
すると、視界はピンボケしていた写真ではなくなります。見ようとしてこなかった不都合なことももちろん見えるようになりますが、それでいいのだと思えるようになります。それが、様々な劣等感コンプレックスに囚われていた自分を見直す契機になると思います。
確かに華々しい世界に僕は住んでいませんし、こうやって徒然ごとを紡いで、素晴らしい曲を紹介することがお似合いなのでしょう。そして、それでいいのだと思ってゆっくり生きて、ひっそりと静かにいなくなりたいですね。
ライラック / 美波
https://youtu.be/GQ3V50XoLOM
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