第1話 HSP(Highly Sensitive Person)を知った日 Part1

HSPというものの存在を知ってから、まだ4日ほどしか経っていない。


私がHSPのことを知ったのは、病院の待合室だった。その日私は、数ヶ月ほど不眠の症状に悩まされていたために会社近くの病院を訪れていた。その前夜もやはり十分な睡眠を取ることができなかった私は、エアコンのお陰で快適な室温に保たれた待合室で、ウトウトとしながら名前が呼ばれるのを待っていた。とはいえ、眠るには至らない。寝不足ではあるものの、やはり慣れない場所では眠ることができないらしい。


とはいえ、何もせずに待っているにはあまりにも退屈な時間だ。そこで私は、現代人よろしくスマートフォンを取り出してGmailを確認したり、SmartNewsをチェックしたりした。病院ということもあり、スマートフォンを使用することには若干の抵抗を感じたが、周囲の複数の人たちが皆スマートフォンを使用していたので問題ないと判断した。


そして、Chromeアプリで検索をしている時にたまたま行き当たったのがHSPだった。随分と唐突な話だし、手前の件(くだり)を考えれば乱暴な描写ではあるが、本当にたまたま行き当たったという感じだ。どんなキーワードで検索をしたのかもよく覚えていない。「不眠 原因」といった目の前の症状に関連するキーワードで検索をしたような気がするし、「会社 疲れる」といったキーワードで検索したような気もする。


とにかく、スマートフォンでググった結果、HSPというものに行き当たった。


その存在を知ってから、まだ4日しか経過していない。だから、まだ十分な知識を持っているとは言い難い。とはいえ、この一連のエッセイではHSPを大きなテーマにしたいと思っているので、付け焼き刃的な知識をひけらかしてHSPについて簡単な説明を加えてみたいと思う。


HSPとは、Highly Sensitive Personの略。端的に言えば、一般的な人よりも非常に”敏感”な人のこと。世界人口なのか、日本国内の人口なのか、あるいは国別の差異が判明していないのか、詳しいところは正直わからないが、いくつかのウェブサイトや書籍を見てみると、人口の20%程度、5人に1人はHSPに該当するらしい。


そして、HSPはうつ病などとは異なって病気ではなく、”気質”なのだとか。ただ、敏感であるがゆえに様々な影響を受けやすく、それが原因でうつ病に至るケースもあるそうだ。


そして、HSPである人には「DOES(ダズ)」と呼ばれる次のような特徴(※2)があるらしい。


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【Depth of processing】考え方が複雑で、深く考えてから行動する

一を聞いて、十のことを想像し、考えられる

調べ物をはじめると深く掘り下げ、その知識の広さを周りに驚かれる

お世辞や嘲笑をすぐに見抜いてしまう

物事を始めるまでにあれこれ考え、時間がかかる

その場限りの快楽よりも、生き方や哲学的なものごとに興味があり、浅い人間や話しが嫌い


【Overstimulation】刺激に敏感で疲れやすい

人混みや大きな音が苦手

友達との時間は楽しいものの、気疲れしやすく帰宅すると、どっと疲れている

映画や音楽、本などの芸術作品に感動して泣く

人の些細な言葉に傷つき、いつまでも忘れられない

些細なことに過剰なほど驚いてしまう


【Empathy and emotional responsiveness】人の気持ちに振り回されやすく、共感しやすい

人が怒られていると自分のことのように感じ、傷ついたり、お腹が痛くなったりする

悲しい映画や本などの登場人物に感情移入し、号泣する

人のちょっとした仕草、目線、声音などに敏感で、機嫌や思っていることがわかる

言葉を話せない幼児や動物の気持ちも察することができる


【Sensitivity to subtleties】あらゆる感覚がするどい

冷蔵庫の機械音や時計の音が気になってしまう

強い光や日光のまぶしさなどが苦手

近くにいる人の口臭やタバコの臭いで気分が悪くなる

カフェインや添加物に敏感に反応してしまう

肌着のタグなどチクチクする素材が我慢できないほど気になる

第六感がはたらき、よく当たる


※2 出典:新宿ストレスクリニックhttps://www.shinjuku-stress.com/column/psychosomatic/hsp/

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病院の待合室でこのウェブサイトを見た時、私はなんとも言えない気持ちになった。

とにかく、自分自身がHSPの特徴とされている非常に多くの項目に当てはまると感じたからだ。具体的に、どのような項目にどのような形で当てはまると感じたのかについては別の機会に話したいと思う。ただ、とにかく、ほとんど該当するのではないかと感じるほどだった。


とはいえ、そんな事実を前に、私の中にはどうにも複雑な感情が渦巻いていた。


「やっと自分の存在を見つけてもらった」

「やっぱり自分は”一般的”ではないのだ」

「じゃあどうすればこの生きづらい気質をなんとかできるのだろうか」

「自分の周りにいる他の人たちもこういう風に感じているけれど、それぞれがうまく対処して生きているんじゃないんだろうか」


中年と言われるような歳になって、ようやく今までのあれやこれやの”原因”のようなものが見えてきたようで、それはそれで嬉しくて、でもどこか腹落ちしない感じもあった。HSPの特徴として挙げられていた項目のほとんどに該当するものの、そもそものHSPという”説”の正しさや、それが生まれ持った”気質”であるという説明には、どうにも納得のいかないところがあった。なにせ、まだHSPという存在に出会ったばかりだったから。



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