極彩始季

種を植えよう

貴方に似た花を想って

水を零そう

貴方の好きな色を願って

灯火を添えたなら

きっと忘れられるから


空を飛べなくてもいい

新しい映画も見れなくていい

未来を知る権利をあげるから

過去に囚われてしまいたい


本当の気持ちなんて知らないくせに

日付、時刻、最後の会話

尋ねようともしないのに

あいつらは薄汚れた処方箋を投げつけてくる


種を植えよう

貴方に似た花を想って

水を零そう

貴方の好きな色を願って

灯火を添えたなら

きっと忘れられるから


空を飛べたって届かない

映画のチケットは二枚買いたくなる

成長乏しい未来だろうから

もう歩幅を合わせるのはやめにしよう


種を植えたよ

貴方に似た花が咲くから

水を零したら

貴方の好きな色が産まれる

灯火を添えてみると

たちまち黒く成り果てた

そうだね、貴方みたいに


また種を植えた

貴方に似た花が見つからない

水が零れない

貴方の好きな色が分からない

灯火は私の中にある


頚椎けいついを圧迫する十秒間に

出来るだけ貴方を思い描くよ

灯火が燃え果てた時

きっと忘れられるから

貴方以外の、あらゆるすべてを。

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