ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~

青空顎門

プロローグ ロリコン村の転生者

第1話 目覚めの日

 いわゆるオタク以外に「お前はロリコンなのか」と問われれば、俺は渋々ながら頷かざるを得ないだろう。

 しかし、オタク、特に真性のロリコンに問われれば、違うと言わなければならない。

 何故なら、明確に分類するなら俺は人外ロリを愛する者だからだ。


 ただ、まあ、他意なく子供は好きだ。

 大学卒業を記念とした海外旅行先で銀行強盗に遭遇し、そこで共に人質にされた少女を庇って死んでしまうぐらいには。

 先達たる者、後進を守り、導くべし。

 そう両親から常に言われ続け、俺もまたそう思っているから。


 そんな俺にとって、これはご褒美なのか罰なのか。

 俺は今、赤ん坊の小さな体で、見た目十代前半ぐらいの美少女からされていた。

 よく分からないが、どうやら記憶を保ったまま転生してしまったらしい。


 あ。乳を飲んでるのは自発的な行動じゃないよ?

 気づいたらこの状態だっただけだよ?

 いや、マジで。


「おお、おお。いい飲みっぷりじゃなあ。さすがは妾達の息子じゃ!」


 俺の内心の動揺を余所に、飛び切りいい笑顔で言う美少女。

 燃えるように赤い髪に、同じく炎のように赤い瞳。

 ツーサイドアップに勝気な目と、どこかのアニメのヒロインみたいだ。

 しかも、のじゃロリ。


 そんな彼女の満面の笑みを見ていると、何故か無意識に喜びと安堵が込み上げてくる。

 彼女の言葉通り、今世の母親だからだろう。

 全く興奮しないのも、それが理由に違いない。

 前世の倫理観から来る背徳感はヤバいが。


 それはそれとして…………。

 これが夢じゃなく本当に転生したのなら、俺は間違いなく死んだんだよな。

 教え通り、ちゃんと後進を守ったんだから、両親は褒めてくれただろうか。

 ……いや、自分の命を守れなかったんだから怒られるか。

 親より先に死ぬなんて、本当に申し訳ないことになってしまった。

 孝行のしたい時分に親はなし、と言うけど、まさか俺自身が死んでできなくなるとは思わなかった。

 親孝行どころか、最大の親不孝だ。

 賽の河原に送られて責め苦を受けても不思議じゃない。

 なのに何故、転生などしてしまったのだろう。

 あるいは、償えない罪悪感を抱き続けることこそが俺への罰なのか。

 そんな感じにしんみりとした気持ちになっていた俺だったが――。


「夜のお主にそっくりじゃ。のう、あるじよ」

「ああ。立派なロリコンになりそうだな」


 聞こえてきた会話の余りに酷い内容に耳を疑った。

 母親の言葉にも小一時間問い詰めたい部分があったけど、問題はもう一人(黒髪の男)の発言だ。


 何故このタイミングでそんな単語が出てくる。

 俺は確かに広義ではロリコンかもしれないが、狭義ではロリコンじゃない。

 言うなれば人外ロリコンだ。

 そこはいいとしても、生まれてすぐロリコン認定はいくら何でも酷くないか?

 困惑の余り、切なさが木っ端微塵に吹っ飛んでしまったじゃないか。

 とか思ってたら、ロリコン発言をした男が頭を撫でてくる。


「イサク。ママのおっぱいをたくさん飲んで大きくなるんだぞ」


 愛情を示すように耳元に近づいてくる顔。

 視界の中、見る者を魅了するような金色の瞳が目を引く。

 ってか、よく見たら何だこの超イケメン。

 どうも俺の父親っぽいが……って、つまり、この十代前半にしか見えない母親の夫?

 それこそ、とんだロリコンじゃねえか!

 これが元の世界なら「おまわりさんこの人です!」となりそうだ。

 いや、もしかしたらイケメン無罪かもしれないけど。


 あー、もう。訳が分からん。

 そう内心で頭を抱えていると、体が満足したのか自然と母親の胸から顔が離れる。

 可愛らしいちっぱいが見えた。

 子供を生んでこれでは普段は断崖絶壁だろう。

 俺は人外ロリならどちらでも行ける口だけど、やはり興奮はない。

 ……と言うか、何だか眠くなってきた。


「おお、待て待て。眠る前にゲップじゃ」


 軽く揺すられて睡眠を妨害されながら、優しく背中を指先でトントンされた。

 たまに掌で背骨に沿って下から上にさすられる。

 しばらくすると、何かが喉を上っていくのを感じ――。


「げぷ」


 勝手に空気の塊が口から出ていった。

 何か物凄くスッキリした。眠気も強くなった。


「よしよし。いい子じゃな」


 母親はこちらを覗き込んで満足そうに優しい笑顔を見せる。

 それから彼女は抱き方を変え、寝易い体勢を作ってくれた。

 緩やかに意識が眠りへと落ちていく。


「本当にお主によく似ておる」


 頭に二人分の手の温もりを感じる。

 謎の発言はともかくとして、今生の両親からの深い愛情を確かに実感する。

 だからこそ、尚のこと前世で先立ってしまった不孝が悔やまれて――。


「お休み、イサク」

「いい夢を見るのじゃぞ。妾の愛しい息子よ」


 俺は今世こそ孝行息子になれるよう願いながら、夢の世界へと旅立ったのだった。

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