第7話開拓者村

 さて、大量のホーンラビットを美味しく料理するには俺の知識と技量には問題がある。創造力が魔法を創り出すとしたら、色々な小説を読み創作活動をしていた点は有利だ。何よりアニメを観ていた事で、映像として心と頭に色んな魔法が残っている。


「クッキングサイト」


 やったね!


 眼の前によく使っていた料理サイトの画面が出ている。


 まぁ昔読んだ漫画の御蔭で、ウサギの内臓料理(クソ料理)の知識だけはあるが、とても食べる気にならない。だから消化器系の内臓は全部捨てて、肝臓・腎臓・心臓などと正肉だけで作れる料理をさがそう。


 1つはフランス料理の調理法でいえばブレゼにあたる料理。丸ごとの兎に詰め物をして、付け合わせの野菜などと一緒に鍋に入れ、少量のワインとブイヨンを加え、蓋をしてオーブンで蒸し煮する物だ。ひとつの鍋ででき上がる豪快な家庭料理だが、これを作るにはオーブンが必要になってくる。


「ドローン配送」


 まずは出来るだけ大きいオーブンを購入する必要がある。だがオーブンは全部電気かガスだ、しかもガスでも電源が必要だから、一旦オーブンは諦めよう。そうなると、野外でも使えるプロパンガスのコンロを最初に確保だな。


 2口プロパンガスコンロ:15780×3=47340


 ローストなどの焼き物をする為には、バーベキューセットと炭が必要だろうか?


 を!


 LPガスで使える大型のバーベキューコンロがある、これを3つ購入だな。


 大型のLPガス用バーベキューコンロ:188000×3=564000

 20kg(47L)のLPガス容器が燃料込:25000×6=150000


 さて、レシピと調理器具は揃ったのだが、問題はホーンラビットの解体だ。血抜きは完璧に出来たと思うが、皮・骨・脂肪・内臓・正肉とさばく技術がない。


「セイ、ホーンラビットを解体したいんだけど、やれる?」


「我は樹木だぞ、肉など必要としないから、解体など出来ん」


「まあ、当然そうだわな、森に戻ったらエルフやドリアードは出来ないかな?」


「我の森の子は基本草食なのだ、一部雑食が可能な者もおるが、好んで肉食などせん。だから解体の技術など誰も持っておらん」


「だとすると人間の町か村に行くしかないよな」


「この近くに人間の開拓村があるぞ」


「セイは人間の村に一緒に行ってくれるのかい?」


「うむ、別に構わんぞ、ただ人間の村に入ったら念話だけで会話することになる」


 まぁ当然だな、鉢植え喋(しゃべ)ったら大騒動(おおそうどう)になってしまう。


「そう言う事だ」


 また心を読む!


「仕方あるまい、樹木の精霊はよほど上級レベルでないと話すことはできない、普通の樹木は念話で会話するのだ」


「分かったよ、それで開拓村に行くには、どちらに向かって歩けばいいんだい?」


「あっちだ」




 俺はセイを左手で持ち1時間ほど速足で歩いたのだが、幸いなことにモンスターに襲われる事はなかった。どうやらセイが周囲を威圧(いあつ)してくれたようで、狂ったモンスター以外は逃げ出したそうだ。


 確かに原初から生きているような特別な精霊が威圧をしたのだ、生存本能が正常に働いているモンスターや獣は逃げ出すだろう。しかしそう考えたら、欲にまみれてセイに攻撃を仕掛けてきた人間と言う生物は狂っていると言えるかもしれない。なんとも情けない話だが、俺も人間なんだよな。


 ようやく見えてきた村は、高さ5m級の丸太塀で周囲を囲んでいた。見えない所は分からないが、入口は1カ所しかないようだ。しかもその門は閉められており、門の外には誰もいない。門の上は2階建てになっていて、門番なのか衛兵なのか2人の兵士が見張っている。


「貴様何者だ!」


「旅の者ですが、道に迷ってしまいました、中に入れて頂けないでしょうか?」


「身分を証明する物はあるのか?」


(ミノル、人は冒険者か商人以外は滅多に自分が住む村を出たりしない、その辺を考えて返事しろ)


 そう言う事は先に言っておいてくれよ!


 俺にはとっさに嘘(うそ)をつく機転なんか無いんだよ。


「いえ、持っていません! 名もない小さな村に住んでいたのですが、暮らしていけずに冒険者になりたくて村を出て来たんです!」


「身分を証明する物がない者を中にいれる訳にはいかん! それにこの村にも冒険者ギルドはない」


「そう言わずに御願いします、途中でホーンラビットを沢山狩ったんですが、不器用で解体が苦手なんで御願したいんです。正規の解体料に割増しで御礼しますから、御願できないでしょうか?」


「なに? 嘘を言うな! ホーンラビットなど何所(どこ)にも持っておらんだろうが!」


(アイテムボックス持ちは1万人に1人くらいの珍しいスキルだが、持っていればかなり有利になるので冒険者や商人には比較的アイテムボックス持ちが多い)


 なるほど、分かった。


「俺はアイテムボックス持ちなんです、ほら!」


 俺はあまり多すぎると警戒されると思い、20羽のホーンラビットを取り出して門番に見せた。


「「おぅ~」」


 2人の門番は顔を見合わせて何やら相談していたが、直ぐに結論が出たのか1人が俺に話しかけて来た。


「村長に相談して来るからしばらくそこで待っていろ!」


 やれやれ、これだけ警戒が厳しいと言う事は、この開拓村は常に危険と隣り合わせなんだろう。何も起こらなければいいのだが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る